BOB

ゴールデン・エイティーズのBOBのレビュー・感想・評価

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)
3.5
パリのブティック街を舞台にした、シャンタル・アケルマン監督の恋愛ミュージカル・コメディ。

「どんな愛もムダじゃないのよ。愛はあなたの心を震わせたわ。愛や夢や希望は決して消えはしないのよ。」

アケルマン監督の異色作。代表作『ジャンヌディエルマン』から180°反対方向に舵を切ったような作品で、ポップでカラフルで賑やかで軽快で開放的。

『ロシュフォールの恋人たち』を想わせる、恋に生きる男女を描いたフレンチミュージカル恋愛群像劇(大勢のフランス人に1人のアメリカ人男性)ではありながら、『グリース』のような突き抜けた明るさとガールズパワーも感じた。颯爽と行き交う女性たちの足元を映し続ける→「ジュテーム、ジュテーム」と若い女性が両隣に座る男性に連続キスをするまでのオープニングシークエンスが印象深い。

さらっと毒づく元気ハツラツなガールズコーラス隊と、軽妙洒脱なボーイズコーラス隊が良い味を出している。

ラストシーン、地上に出た時の解放感が凄い。そういえば全編地下が舞台となっていたことにハッと気付かされた。開放的だったのは感情だけで、実は心身共に閉鎖的だった。

『ジャンヌ・ディエルマン』のデルフィーヌ・セイリグが、ジャンヌという役名で出演しているのは意図的だろう。30年ぶりに再会したアメリカ人男性にときめく既婚女性役なのだが、夫と一人息子と幸せそうに暮らしていて、何だか嬉しくなった。

それにしても、婚約なんかくそ食らえ!と言わんばかりの結末は予想外だったな。

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