鳥が大群で襲ってくるという、それだけのパニック・ホラーでありながら安っぽさなど微塵も感じさせない。
最後、鳥が大群で陥れる場面密室の中で鳥の姿は一羽も見ることができない状況にもかかわらず、羽音がかなりの恐怖をあおってくる
主人公のメラニー(ティッピ・ヘドレン)は新聞社社長のご令嬢ということもあってかなりのアグレッシブ
昨日であって数分話しただけの男に会うため、100㎞離れた田舎町まで車を走らせ、さらに驚かせたいからと言って車からボートに乗り換えて彼の実家に向かう。
どうやって彼の家に向かったのかと言えば、車のナンバーから名前と住所を割り出し、人に彼に関する情報を聞き出すのだが現代にはない個人情報の洩れ具合!
しかも美人だから、町の男がべらべら喋るのなんの!すれ違う人みんな彼女を振り返る
良くも悪くもメラニーは社交的で行動力もある人物として描かれている。
ただ、ヒッチコックがそれを良く思っているのかという点については懐疑的
この映画では男と(メラニー、アニーを例外とする)女の描かれ方がハッキリと区別されており、それは町全体がパニックになった時により顕著に表れている。
レストランのシーン、怪我人を救おうと行動を起こすのは子供ばかりで、女性たちは室内に引きこもりヒステリックを引き起こす。
そして尊雄ヒステリックを引き起こした女性は、この異常現象の原因はメラニーで彼女が悪魔だと喚き叫ぶ。
ブレナー家においても対策を行うのはミッチ(ロッド・テイラー)ばかりで妹も母親も怯えるばかり。
では女性を相対的に弱い立場に描きたかったのかというとそれだけでなく寧ろ、活発に活動しすぎるメラニーに天罰を下したかったのではないだろうか。
厳粛なカトリック教徒であったヒッチコックにはあのように自立した女性像は許せないものだったに違いない。
ちゃんと最後にはメラニーは鳥に襲われすっかりおとなしく(この映画における、ほかの女性たちと同じ様に)なってしまっている。
印象的だったショットは家の中で鳥の襲来に備える場面、母親のリディア(ジェシカ・タンディ)がコーヒー・カップをおもむろに片付けるショット。
わざわざこのショットを入れたのは、不安や恐怖を抱いた時にそれを紛らす行動が普段の行動であり、女性に対するヒッチコックのイメージを表している。