佐藤克巳

慟哭の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

慟哭(1952年製作の映画)
4.5
佐分利信監督作品の初体験。戦後流行アプレ族の典型夏川文子を新人阿部寿美子を起用し、その劇団員で軽薄短小の小娘に幻惑されてしまった劇作家杉守修三を佐分利自身が演じ、看板女優木暮実千代の好意を逆恨みして女優をあっさり廃業してしまった夏川に期待を寄せていただけに、その落胆を悲劇的死に追いやった丹阿弥谷津子の写真を前に慟哭する痛々しさは、戦後日本が精神的に崩れていく予兆を示した商業演劇を舞台にしたバックステージ物映画の傑作だった。また、佐分利の正確無比な演出と併せて、夏川を連れ込み旅館で犯す劇団員三橋達也の演技力には目を見張った。
佐藤克巳

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