きさら

二百三高地のきさらのネタバレレビュー・内容・結末

二百三高地(1980年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

東映チャンネルの期間限定配信にて。
観ておきたい映画のひとつだったため配信に感謝。

・小賀の心境の変化ぶりが悲しかった。作品の掲げる人間性を最も背負った人物だったと思う。ロシアも日本も愛していたのに最期銃でも剣でもなく肉弾戦で、ロシア人であるイワンの肉を千切り目を潰す、残虐な殺し方をしなくてはならなかった。自身も首を噛みちぎられながら。戦争が人を変える、と頭を過ったが、彼の本質である目の前の真実に対する誠実さは残り続けていたからこその結末だったのだろうとも思う。

・小賀が徴兵された時に、生徒が万歳をしていたシーンがとても恐ろしかった。当時の価値観としては出兵され戦地で死ぬのが幸せ。教育の恐ろしさを感じられる。しかしここにラストで"戦争ごっこ"をする子ども達が静かに葬列を見送るシーンを持ってくる。子ども達、引いては後世の存在である鑑賞者に戦争とはどういうものなのか、映画のメッセージが込められていた。

・どの俳優陣も素晴らしかったが、乃木希典役の俳優が大変素晴らしかった。息子を亡くした時の軍刀を通して震えが伝わるシーンは演技と画面の明暗の演出も相まって非常に印象的なシーン。そして何より明治天皇の前でのシーン。冒頭で戦場へ復帰した喜びのシーンがあり、終盤の多くの部下を死なせてしまったことへの悲しみ、怒りが対比として表現されているのもさながら、言葉では無く演技で全てを表現しており感嘆の極みだ。

1980年の映画で3億円もの予算を賭して作成されただけあり、画面に力強さと戦争の悲惨さへの説得力があった。
本当に素晴らしい映画だった。観れて良かった。
きさら

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