映画初心者

西鶴一代女の映画初心者のレビュー・感想・評価

西鶴一代女(1952年製作の映画)
4.6
溝口映画の最高傑作の1つではないでしょうか。時間の流れが美しく、ずっと見ていれるタイプの作品でした。女性が道具扱いされ権利があまり無い時代に生きた強い女性を描く。悲劇的、救いの手があれど結局は悲劇へと転じる。それでも映画としては美しい。

延々と続く悲劇、しかし面白い。なぜなんだろう。それは主人公に寄り添った作品からなんだろうと思います。話は主人公視点からしか描かれず、かつ映像・演出がずっと主人公に寄り添っている。悲劇にあいながらも懸命に生きようとする姿がずっと続く。そして人からの優しさも受けるため、ずっと苦しいと感じる作品ではなかった。

ずっと振り回される主人公。規則や男性によって振り回され続ける。今の時代と全く違う価値観で動いているため、主人公側に同情させる作り。「産ませていただいたでしょ」と否定されるところはとても印象的。

悲劇に転じるエピソードのバリュエーション豊かなこと。理不尽さが全開でどれも印象的。盗人であったり、殺されたり、捨てられたり、何でもあり。しかし、女性が活き活きしていて良いですね。主人公の京ことばの上品さもありますが、助けてくれる女性陣が良い。終盤のおばちゃん達の「生」の感じがまぶしい。

映像もとっても良い。今まで見てきた溝口作品はどれも良い。常にfixかつけパン。特に、今回のつけパンは一味違うといいますか、強いシーケンスをどんどん生み出していました。仏像に囲まれる中を歩く主人公、自分の子供と思しき高貴な子を見つめて歩く主人公(しかも無音演出!)、自分の子をただひたすらに見上げるラストシーケンス。たまらない。基本的に1シーン1ショット主義が強く、カット割りによる見辛さが皆無。自然に映画に入りやすく、かつ画面に飽きがこない設計。

千と千尋ってこの映画のオマージュだったんですかね。開始1時間ほどのシーンで、遊郭で「金ならある」と金をばらまき、従業員がそれに集る一方で、主人公は興味を示さず、逆に面白いと思ってくれる男性。まんま、カオナシと千尋のシーンでやられてましたよね。

【総評】
比較的長い映画ですがずっと飽きがこず見ていれる作品でした。全編悲劇なのですが、このじわじわ面白さが続く感じが良いです。現時点見てきた溝口作品の中で断トツ好きです。
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