西鶴一代女の作品情報・感想・評価

「西鶴一代女」に投稿された感想・評価

書庫番

書庫番の感想・評価

4.2
2019年1月2日 レンタルDVDにて鑑賞。

井原西鶴の浮世草子『好色一代女』を原作に、依田義賢が脚色し、溝口健二が映像化。
主人公・お春の悲運且つ悲惨過ぎる一生を描いた作品。

主人公・お春の転落人生に関わる人間は、父親を始めとして自分勝手で欲深き男達と嫉妬に駆られた醜き女達で、つまりは全員屑ばかり。
さればこそ、勝之介(演:三船敏郎)や扇屋弥吉(演:宇野重吉)との悲恋がクッキリと浮かび上がる。
最後まで人間が持つ醜い悪意と身勝手さに翻弄されたお春の不憫さに胸を抉られる。

作品全体で見た時のシーンの短さ(に伴うブツ切り感)がどうにも気になるが、溝口健二が得意とする長回しやカメラワークは流石と思う。
薄幸のお春を演じた田中絹代の円熟した演技力は圧巻。
圧倒的悲劇の極み。

かれこれ30分程、この映画のレビューについて、書いては消し、書いては消しを繰り返しているのだが、

筆者の語彙力ではこの映画を的確にレビューするのはちょっと無理そう。無念。
あまりにむごい運命をたどった女性の一生。
主人公のお春さんはなにもしていないのに、どんどん周りの思惑に巻き込まれ、次から次に不幸が襲ってきます。やっとつかみかけた幸せもあっという間に奪い去られ、更なる不幸が重なる始末…。
そんな、見てるこっちが勘弁してくれと言いたくなる境遇でも、ぐっと歯をくいしばって生きるお春さんには、受け身でありながら女の強さを感じます。
様々な男達に踏みにじられ、ぼろぼろになったお春さんが、それでも最後に仏に拝むシーンは、とても悲しくもでも清らかで美しく、胸に染みます。映像も非常に綺麗。

このレビューはネタバレを含みます

[無常観]

 凄まじい無常観。

 田中絹代のお春が、御所に勤める程の境遇から、その時代の枷や運命に翻弄されながら、遊女に身を落とす。それでも、その境遇に身を任せながらも人間としての誇りは失わず、巡礼の旅に出かける所で幕を閉じる。

 このお春の運命をたどると、人生にはどんなことでも起こるのだと思えて来るし、自分の境遇や地位が、どんなに変わろうとも生きていくという極致に到達したようにも見える。

溝口健二も田中絹代も、スランプで評判を落としていた時に、この映画でヴェネチア映画祭で認められ、復活を成し遂げたという。この二人もこの映画を作り上げることによってある極致に到達したのだろう。(2018.12.16)
クライテリオン版BD。

幸せ→不幸せ→超幸せ→不幸せ→不幸せ→幸せ→不幸せ→不幸せ→不幸せ→ラッキーチャーンス→どん底→達観。

眠い頭で乱暴に書いてしまえばこんな映画。極めて不幸のズンドコな流転の人生を田中絹代が熱演。彼女にとっても溝口健二にとっても分岐点となる傑作。
がく

がくの感想・評価

3.7
人を自由に好きになるということが罪になる時代。それでも真実の愛を求めたが、それが実ることはないというのはとても悲しい時代です。
女性とは子供を産むため以外の何者でもなく、そうでなければ慰みものになるしかないのでしょうか。

自由に恋愛ができる現代がどれだけ恵まれているかがわかりますね。
ROY

ROYの感想・評価

-
「身分というものがなくなって、誰でも自由に恋のできる世の中が来ますように」というセリフが良かった。
自然に流れるカメラと登場人物の動き。それも1人や2人ではなく、フレームアウトしたと思ったらまた入ってくる人もいたりして、しかもそれがほとんど気にならない、この自然さ。

割と最初の方の竹林を走る母娘のシーンからすごい。また後半も文吉が連れ去られるシーンあたりから物語の展開も相まってテンションがすごいことになっていく。化け猫、息子を追いかけるお春、最後の静かにフレームアウトしていくお春。
eiganoTOKO

eiganoTOKOの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

構図や長回しなどがめちゃくちゃ綺麗で格好いい!
女性の転落ストーリーとして年令や娼婦をダシにされるとツラい…
救ってくれた同業の女だけが救い
運に見放されたお春の壮絶すぎる人生。

当時40代の田中絹代に少女時代役はキツイと言う声を割と耳にしてしたが、所作が美し過ぎて全くもって素晴らしかった。
毅然とした態度のお嬢様が大変似合っている。

「不幸な運命にありながらも、自然と男を誘惑してしまう魅惑的な女」という役柄で、お家のため次から次へと男を渡り歩くが、田中絹代がやると汚れていく感じが全くせず妙に清廉で不思議。
それが生粋のお嬢様であるお春のしっかりとした根の部分・そしてお春の魅力として映った。

醜女への変身っぷりも含め、ほかに適任はおそらく見つからないだろう。

お金をピシャリと払いのけるところ、お皿を持って舞うところの所作が大変美しい。
全体としては女優田中絹代の集大成を感じた。

余りにも壮絶過ぎて、途中で一旦止めたのも初めて。それくらい入り込んでしまった。
音響効果もおどろおどろしさを増幅。

オープニングの展開が終盤で自然に回収されていく流れや仏様から昔の男達を思い出す演出の斬新さ...

下層部を描くのではなく、貴族身分からさんざんに没落していくので、デフォルトの溝口ものよりさらなる闇が広がっていた...
とにかく田中絹代に万歳!な一本。
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