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霧子の運命の3104のレビュー・感想・評価

霧子の運命(1962年製作の映画)
3.5
岡田茉莉子は不幸な表情が似合う。しかしここでの彼女は不幸というより不憫という表現が似合う。それでいて必要以上に「ジメジメ」や「メソメソ」を感じさせないのが彼女のいいところではなかろうか。

生まれの環境に恵まれず、それが影響して後々まで不幸や苦悩、つまずきに見舞われ続ける霧子の運命やいかに・・。

生い立ちや出会った人に恵まれなかったのは動かしようのない事実だが、厄災をしょい込む原因のいくらかは彼女自身の心持ちにもある・・と思わせるような描写(これはこの映画内だけでなく、人生における真理だとも思う)もそこかしこに。トラジディなのにコメディ的な隠し味も伺える、木下恵介による巧みな脚本に乗り物語は進む。

中盤まではいってみれば浮かび上がれない人生の描写の羅列~回想シーンをほぼ挟まず淡々と時系列順に描いているのもあり~だが、吉田輝雄演じる愛人の宇佐美が殺人を犯してからは、宇佐美と2人での「逃避行」がメインとなる。だがこの展開はいささか唐突で、必然性や緊張感があまり感じられないのが少し残念。逃走資金調達のために霧子が故郷に帰る理由づけのために存在したといえば言い過ぎか。加えて宇佐美の役柄の情けないこと・・。
しかし彼になりふり構わずすがりつかれて「それだけで、女は死ねるわ」と言うときの岡田は、この作品の中で最も綺麗で最も素敵な表情をしている。必見(あとは逃走中に宇佐美に首を絞められている時の苦悶の表情も同じくらいに魅力的)。

『嫌われ松子の一生』のような喜劇的要素をも含んだ転落を経て、霧子は墜ちたのかそれとも解放されたのか。かくして映画は幕を下ろすが最後、画面が暗くなったあともエンディングテーマだけが延々と流れ続ける。岸洋子のシャンソン。この〆方は後味悪く独特、そしてことさら奇特である。
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