無名のひと

吉原炎上の無名のひとのネタバレレビュー・内容・結末

吉原炎上(1987年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

明治時代の吉原が舞台。
18歳の久乃は、吉原の中梅楼に遊女として売られたひとりだった。
明治40年。
花魁の九重の下で見習いをし、久乃は若汐という源氏名で客を取ることになる。
しかし、水揚げの最中で若汐は客を拒絶、挙げ句逃亡してしまう。
そこで、娼妓の自由廃業運動をしている古島信輔と出会った。
中梅楼に引き戻された若汐は、九重から性のありとあらゆる技法を伝授される。
しかし絶頂なくことを済ませた方が良いとされる花魁にあって、九重は絶頂を迎えた。
若汐には床の才能があったのだ。
数日後、九重は借金を清算して吉原を去るのだった。
それから1年後。
中梅楼の筆頭になった吉里は、足しげく通う情人があった。
そんな中、若汐と親しくしていた菊川が品川の店に住み替えになる。
ある夜、若汐のところに信輔が現れた。
彼は古島財閥の当主だったのだ。
信輔は若汐を贔屓にして幾度も通いながらも、一度も若汐を抱くことはない。
中梅楼の筆頭である吉里は、情人と無理心中をしようと男を追い回し、白昼の往来で無関係の者を巻き込んで自害する。
さらに1年が経過。
小花は喀血していることを隠して客を取っていることが知れ、中梅楼を離れることに。
その間に、小花に代わって若汐が筆頭の座に就き、由緒ある紫という名を継ぐ。
しかし、小花が元々自分にあてがわれていた部屋だとして紫の部屋に押し入り、夜具を切り裂いて喀血して死亡。
さらに時間は経ち、一年後。
信輔は2000円を渡され家を出されたと言って紫の前に現れる。
その金で紫を身請けしたいと言うのだが、遊女としての自分を一度も抱いてくれなかったとすげなく断ってしまう。
その金で、花魁道中の夢を叶えてほしい言う紫に、信輔は首を縦に振るのだった。
親しかった菊川は安女郎に身を俏しており、出世した紫とは心も離れてしまっていた。
そして、紫の花魁道中が行われる。
しかし信輔は菊川と親しくしているお春と言う若い女郎の所に通いつめていた。
信輔と疎遠になっていた紫は、信輔の居場所を知らされて会いに行こうとする。
しかし菊川に制止され、会うことなく袂は分かたれた。
そして紫は馴染み客に身請けされ、吉原を去る日が来る。
信輔とお春が抱き合っている時油を倒してしまい、行灯に引火して火事に。
大門を潜っていた紫は、心から愛していた男信輔の元に駆けつけようとするも、時既に遅く吉原は火の海に包まれていた。




6人の遊女のそれぞれの人生を、主人公久乃(若汐・紫)を中心にして描かれている。
「生きては苦界 死しては浄閑寺」とはまさにこのこと。
久乃・若汐・紫→身請け
九重→借金返済
吉里→自害
小花→病死
菊川→生存
お春→焼死
生き残っていても、それぞれに辛酸を舐めたことと思う。
信輔が久乃を抱かなかったのは、身売りすることを嫌がって逃げ出した彼女の姿が目に焼き付いていて、彼女を金で買う形で抱きたくなかったんだと思う。
でも、久乃にしたら遊女としての矜持も芽生えただろうし、その仕事含めて自分を愛してほしかったのかなと。
好いた男に求められなかったことが辛くて、最終的に突っぱねたんだと解釈。
だから、お春は抱けたのかなと。
未だ吉原に通ってるあたり、信輔も久乃に対する未練はあったのかな。
夢をかなえるため身請けできるだけの大金を出せる信輔は男前だとは思うけど、もっとちゃんと自分の考えを口にしてればこんなに拗れんかったんじゃないかと思うと…純愛と言えばそれまでだけど、難しい…。
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