まっつん

FAKEのまっつんのレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
4.3
いやぁ、レヴューを書かなければいけない映画が溜まっております笑。というわけで森達也監督のFAKEです!佐村河内騒動のその後に迫ったドキュメンタリー映画です。

まず本作において森監督が打ち出したテーマは「白黒つけたがる現代社会への警鐘」だと思います。みんななんでも「敵か味方か」「右か左か」に二分したがります。その方がみんな楽だし、それを商売にしている人だっている。でも実際世の中や人間って単純な二分論では決して語りきれるものでは無いんですよね。だから真実は誰にも分からないし、どこまでが本当でどこからが嘘なのかなんて知る由もないんですよね。それがこの映画が示す「真実などどこにもない」というたった一つの真実です。

でもその単純な二分論を信じてる人は、人間の複雑さに直面した時に怒るし不寛容な態度で異物を排除しようとする。「信じていたのに裏切られた」と言って。

それが分かっているからこそこの映画を観終わった後には何か森監督の意地悪さなんかも感じてしまうんですよね笑。「この人本当は佐村河内さんのこと信じてないんじゃないの?」って。だからそう見ると終盤の流れは一種確信犯的とすら言えると思います。衝撃的なクライマックスに映り込む森監督の靴下...果たして偶然映りこんだのかわざとやってるのか??

さらにエンターテイメントとしてもずば抜けて面白いです。てか意図的にそう作ってると思います。素材だけではどうにもならない映画的な編集であったと思います。例えば、非常に印象的だった猫とケーキ。何か起こるとケーキが出てきて猫の俯瞰視線のような映像が挟み込まれる。よく見るとこの映画はその構造を意図的に繰り返していると思います。そして最後の最後でケーキに関する伏線回収があるという非常に上手い流れになっていました。

また笑えるとこは笑えましたね!「なんでそんなに豆乳飲むの?!」とか「音楽家なのに部屋に楽器ないの?」とか結構笑えます。こういうところも単純に笑えるシーンとしてではなく佐村河内氏を象徴とした「人間の多面性」を描くのに一役買っているあたりも素晴らしかったです。