まぐろさばお

竜馬の妻とその夫と愛人のまぐろさばおのレビュー・感想・評価

竜馬の妻とその夫と愛人(2002年製作の映画)
3.9
前半の雰囲気は非常によく、セリフに頼らず暮らしぶりや仕草・癖など些細やかな部分で徐々にテーマに迫っていくのは市川準らしいうまさを感じた。
亡き人、過ぎた時代、故郷を思わせる海原の心象カットに痛切なダニーボーイを流すなどはなるほどいつもの市川さんだ。

反対に後半部分ではテーマが少し停滞する時間があり、三谷幸喜流のコントに移行する。市川さんが普段やらないハッチャケ方(薬草種を思い切り吹き出したり)、天丼(作戦会議、決闘も二転三転)など、市川さんなら一回クスリという笑いを挟んで引っ張らないけど、三谷脚本だとそこを大きな笑いになるまでテーマから逸れても繰り返す傾向があり、その点で市川さんらしくないカラーを出せているところをプラスと見るか、映画的な表現というよりテレビドラマやコント的で停滞しているのでマイナスと見るかは意見が別れそう。前半は素晴らしい。

ただ全体的には監督と脚本それぞれの特色が混じり合っているのは明らかだし、心理恋愛ドラマとしてはワイルダー風に非常によく練られた脚本なのはさすがと言ったところ。現代語バリバリなのも悪くない。こういう作品もあっていいなと思う。木梨さんの演技は予想以上に良かった。