ニャントラ

クルード 〜アマゾンの原油流出パニック〜のニャントラのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

エクアドルの先住民が暮らす土地に、ある日テキサコという企業により石油採掘場が作られた。川に石油が流れ込み健康被害が出まくっていることから、テキサコを買収したシェブロン相手に訴訟を行い奮闘する人々の話。
裁判は2012年に原告側の勝訴(シェブロンに90億ドルの支払命令)で終わっているみたいだけど、その後シェブロン側がオランダのハーグ常設仲裁裁判所で裁判を起こして、エクアドルの最高裁判決が棄却されたりと、あの手この手で支払いを免れようとしている様子。
調べた感じ、結局賠償額が大きすぎてシェブロンラテンアメリカ支社では払いきれないから本国や他国の支社にお金をもらうしかないけど、どこの国でも棄却されてるから結局請求額分は全然貰えそうもないって話っぽい。最終的にどうなったのか分からないんだけど、20年近くも訴訟を頑張っていたのにあまりにも残酷な話だと思う。世の中に公正とか正義とか、ないんだなって感じ。
しかも原告側の弁護団リーダーをしていたドンジガーさんはシェブロンに報復訴訟され実刑6ヶ月を受けて、割と最近まで家に軟禁されていたらしい。なんなんだ本当に。以下感想。
・自分的には、シェブロン側も度々主張していたけど、石油採掘場を建てたシェブロンと操業していたペトロエクアドルを同時に訴えた方が良かったんじゃないかと思ったけど、そんな人員もお金もなかったんだろうな。もちろん金欲しさではないにしろ、シェブロンに勝たないことには次の裁判を起こす余力もなかったということなんだと思う。
・「テキサコは政府のチェックを受けながら土地の浄化を行った」というシェブロン側のデータ、誰が信用できるのか。「科学的データ」と言うと一見信用できそうだけど、裏で何やってるか分からない以上信用に足るデータではないと思ったし、そもそも「原油は自然に存在してるもの」って、そりゃそうだけど石炭ガリガリ食ったら死ぬんだから自然に存在する=無害ではないだろと思った。
・雑誌の記事になったり環境保護団体に支援受けたり、良い兆候が見えたのは観ていて希望だったけど、小国は常に大国やお金のある人の助けを受けないと自分たちの生活を立て直すこともできない・きれいな飲み水を得ることすらできないって辛いなと思った。チャリティライブで「今日は暗い話はナシよ!」って環境団体の支援者が言ってたけど、こっちは毎日暗いんだよ!と言いたくならんか?と思った。結局普段は生活に困らず保護してる側だなっていうか。でもそういう取り組みでもしないと活動資金は集まらないんだろうからしょうがない部分もある。
・ガンになった母娘、お金もないから体つらくてもなんとか働いて稼いで病院行って、それでも多分死を待つしかないっていう……。いつだって苦痛を被るのは小市民。人間にはそれぞれたくさんの喜び渦巻く人生があるのに、国や世界の規模で考えるとそれらはあまりにも小さく、苦しみを知られることもないまま死んでいく人がたくさんおり、それに甘んじて何も支援をしない企業や政府に苛立ちを感じた。なぜそれで平気でいられるのか?人道を守るために必要なお金はあるだろう。政府もなんでその状況を放置していたんだろう。まあ多分、あそこに住んでいたのは国内でもかなり少数派な人々なんだろうけど。日本で言えば、北海道の名前も知らないような小さい村の人たちが困っている、くらいの話なんだろう。多国籍企業に喧嘩を売ることはアメリカに喧嘩を売ることでもあるんだろうしね。だからしょうがないとは思いたくないけど、まあ起こりうるだろうなという話でもある。世の中、力を持ったもん勝ちであることが悲しい。
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