Dantalian

夏の嵐のDantalianのレビュー・感想・評価

夏の嵐(1954年製作の映画)
4.1
伯爵夫人の女性としてのイノセンス:政治におけるイノセンスの暗喩?
→イノセントだから、対象の実態を知らずに幻想で判断し、行動するので、ナショナリストと革命家にもなり得るし、売国者、密告者にもなり得る。

一時の情欲を本当の愛に勘違いして、そのため全てを捨ててしまい、理性を失う女性像もステレオタイプだし、革命の理想を一時持っていても恋人が現れたとたん全部捨てて、仲間を裏切るまで自我をなくして、儚い恋に依存する女性像もまた紋切り型で気にくわない。

フランツのクズぶりが過剰に描かれているからこそ、ラストに対して多くの人は「よくやった!!」と喜ぶだろうけど、逆にいえば恋人にひどく傷つけられて、深く愛していた人がもう愛してくれないとわかったら命を奪おうとする反応は、そこまで執念を持っている、その人の存在に自分の行動が左右されることにもなるから、彼女は全く変わっていない。

ある意味フランツが言った「幻想の僕じゃなくて本当の僕をみろ」というのは事実で、恋を知らなかったであろう伯爵夫人が求めるのはロマン劇に過ぎない。フランツは彼女のそういうところを知っているからこそ彼女のことを支配できただろうし、彼女の目に魅力的に映ったのだろう。

19世紀60年代の貴族の日常と戦争場面を壮大に、美しく描いている。さすがヴィスコンティ。
またクズ男を描くのも上手…
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