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トゥルーマン・ショーのYU@Kのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
3.8
生まれからずっと、作られた世界で人生を万人に見られてきた男の物語。知らぬは自分だけ、周囲の人間は皆彼を騙すためだけにそこで生活している。ドームの街から出ないよう彼の意識も思惑もコントロールするというのはとても非人道的だが、つい身を乗り出して見てしまう。
人生、誰でも一度は思った事があるだろう。「自分の人生は、何か人智を超えた存在による机上の演出ではないのか」。星新一か誰かの短編にもそういったテーマの話があった。結局は思い過ごしで済むのだが、その妄想を嫌にリアルに映像で見せてくれるのがこの作品である。
物語の構造・全体像が見えた時の「ドキリ」が半端じゃない。「ああ、なるほど、でも、これ程に哀しい話があってたまるか」。自分が箱庭の存在だと知った主人公の奮闘は、現実でくすぶっている我々視聴側の代弁者のようで、悲哀を感じつつ応援をせざるを得ない。
ラスト、たどり着いた世界の壁から出ても、そこからの生活は決して容易ではないだろう。絶対に苦難ばかりだろう。でも、いつも明るく前向きに壁に立ち向かうその姿勢こそが大事なのだと、つい気付かされる。フィクション設定が過ぎるほど、人生の真髄を暴いているものだ。
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