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僕の村は戦場だったのSのレビュー・感想・評価

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)
4.0
n度目の鑑賞。

 ものすごい久々に映画館で観た。この作品はデジタルリマスター版の馬場訳とロシア映画社の字幕で、イヴァンのキャラクター解釈がだいぶ違う。今回、ユーロスペースで上映されていた後者のイヴァンはちょっと気弱で子供っぽいところが強調されていると思う。
 制作の事情で、予算もかなり使われているし小道具やセットなどが既にあるし、もう撮影日数も少ないようなトンデモ状況で監督の座を引き継いだこともあり、タルコフスキーらしさというのは抑えめ。むしろ、明暗のコントラストや影の演出、ラクルスと呼ばれる仰角のカメラ配置など、当時のソ連映画らしさの方が目立つ(もちろんタルコフスキーも同時代の流行りの影響下にはあった)。
 そんな本作の中で、原作にはないイヴァンの四つの「夢」のエピソードがタルコフスキーの色だとしばしば指摘されている。個人的には、クライマックスの場面で、ガリチェフの視線の先でイヴァンの斬首が再現される、過去と現在が入り混じるような奇妙な時空間の演出が、後のタルコフスキー作品から見るともっとも特異な点だと思う。ちなみにこのシーンも原作にはない。

 イヴァンとホーリンとガリツェフによる偵察の場面、こんなに長かったっけ……とちょっと退屈した。まあセリフにもある通り、戦争とはかくも静かなものなのかもしれない。
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