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千年の恋 ひかる源氏物語のIKのレビュー・感想・評価

千年の恋 ひかる源氏物語(2001年製作の映画)
4.2
源氏物語は私が忌むモチーフそのもの、男権社会、身体への耐え難い気安さでしかないのにそれでも不思議と初めからこの作品にどこか信頼と好感を抱いていた。それは紫式部の言うあの物語は女の歯ぎしりであるがアンサーで。
源氏物語の中では特権的階級にある男がそれを振るい容姿と口先だけで自身の欲望を満たし人を傷つけ続け、更にどれだけ道を踏み違えてもそれに応える女がいて、結局そのことで苦しみ続ける女とその場の衝動だけで相手とその後のことなど一切考えてない男の姿がある。お嬢さんでもそうだったけれど、男権社会の男は人を憐れにも思うことができない。憎んでいたり蔑んでいても相手を可哀想だと憐れだと思うこと。それが人の心を持つということだと私は思っている。紫の上が明石の君を立派に育てたことも、明石の君が育ての親の紫の上に寄り添い続けたこともそうじゃん。人として真っ当であること、そう努めることが人の真価。だから紫式部は惹かれ最大の権力者となった道長の誘いに乗らなかった。道理に叶わぬことや、男が良いものを与えれば女を所有できるという考えに賛同できないから。そういうの含めてこの作品の姿勢が好き。
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