七沖

モスラ対ゴジラの七沖のレビュー・感想・評価

モスラ対ゴジラ(1964年製作の映画)
3.5
〝マッハ3の巨蛾か! ミサイル軍戦車のゴジラか! 陸・海・空を揺がす世紀の激斗〟
遂に東宝三大怪獣のうちの二匹がぶつかる。新文芸坐のモスラまつり第2弾で観賞。

台風の翌日、日本近海に巨大な卵が流れ着いた。卵を利用しようとする人々の前にインファント島の小美人が現れ、卵は自分たちのものだから返して欲しいと主張するが、拒絶される。
時を同じくしてゴジラが現れ、対抗策に窮した人々はインファント島の守り神・モスラの力を借りようとする…というストーリー。

前作『モスラ』とはストーリーが繋がっておらず、前作で中條を演じた小泉博は、本作では三浦という別人を演じている。そのくせ小美人役のザ・ピーナッツは続投なので、前作と本作を連続して観ると混乱する(笑)。俳優は同じなのに役は違うというのは東宝特撮あるあるだと思う。

前作に引き続き環境破壊と人間のエゴがテーマになっている。
卵の返還を拒否したにもかかわらず、ゴジラが出てきたらモスラに助けてもらおうとする人間の身勝手さが描かれていて、この話をもっと深掘りしたらかなり社会派な映画になったと思う。

映画ごとにゴジラの着ぐるみは仕様が異なり、本作のゴジラスーツは通称モスゴジと呼ばれている。個人的には一番好きなゴジラだ。
善のモスラと戦うこともあって悪人面で、大きな瞼・三白眼・ボリューミーなほっぺが特徴的だ。寝ぼけてテレビ塔に尻尾を引っ掛けて抜けなくなったり、名古屋城の堀に足を取られたり、幼虫モスラを眼中にないかのように無視したりと、人間らしい感情移入できる場面がある素敵なゴジラだと思う。
モスラの動きも結構リアルで、操演の技術力の高さが素人目に見てもよく分かる。早送りも駆使してリアルさを出す、まさに特撮の真骨頂だ。

ゴジラに明確な黒星をつけたという意味でも衝撃的な一作。
避難を促すのがスピーカーのアナウンスではなく鐘楼の鐘の音というのが、時代を感じさせた。
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