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星になった少年 Shining Boy & Little Randyのtarotaroのレビュー・感想・評価

3.8
この映画のキーワードを一つだけあげるなら、「気持ち」かなぁ。
(その意味合いを強く感じる、という点だけでなく、実際にこの言葉自体が多用されていたように感じるのです。)

主人公テツの言葉にあるように、
「僕たち(人間)は、気持ちを伝えるのが下手くそ」で。
本当に大切なことを、こういった映画や物語から「動物たちに教わる」ことが多くある。

多くの動物たちは、私たち人間より寿命が短い。
だからこそ、短く限られた一生の間に
「伝えるべき気持ち」を、全て真っ直ぐ純粋に伝える力を持っているのかも知れない。
逆に、私たち人間は「気持ちを伝える」ことに関してとても不器用で
たった一つ二つの大切な気持ちを伝えるだけで時間が掛かってしまうから、
一生という長い有限な時間を使って、時に学びながら、伝える術を知っていくのかもしれない…と。

そう考えると、
映画の中盤の白像のお告げ?の「ゾウと仲間になったら、お前は早く死ぬ」
という言葉に、とても深い意味を感じる。

「ゾウと仲間になったら」=ゾウのように心を通わせられるようになったら、
「お前は早く死ぬ」=生きる意味を果たしてしまう。
(人やゾウのように“感情をもつ生き物”は、伝えるために生きているのだから…)

と、私は解釈した。

人間は、きっと頭はいい。
高い知能を備え、言葉も道具も器用に扱える賢い生き物だ。
でも、心とか感情なんかは、案外馬鹿で未熟で、まだまだ発展途上なんじゃないかな。
その点、言葉や文明を持たない動物たちの方が、心は優れているんだ。
優れている…というか、きっと本当に純粋で、邪魔なものが一切ないのだろう。

私たちは生き物で、機械じゃない。
機械に知能や言語や道具は不可欠だが、
生き物にとってのそれは、生きるための「手段」にすぎない。

私たちは、学校や会社…生きていく過程の中で、そういった手段をたくさん学び、生み出してゆくけれど、
何のために学ぶのか、何のために誰のために生み出すのか、その根底で最も大切にすべきは何なのか。
そういったことを考えながら、最後まで観ていました。

この映画のキーワードは「気持ち」。
そういう視点で観ると、(「何を伝えたいのか分からない」というレビューも多いですが、)
大きくてストレートなメッセージを感じる映画だなぁと、私は思います。

(…確かに展開は無理矢理に感じる所もあるけれど。笑)
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