猫脳髄

彼岸花の猫脳髄のレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.2
小津のカラー6作品の最初を飾る作品。暖かみのあるアグファ・カラーに赤が生える。伊藤弘了が「小津の狂気」と呼んだグラスの液体が一直線に並んでいるなど、異常とも言える細部へのこだわりが伺える。小津のフレームあるいはグリッドへの拘り(もはや症候と呼べるかもしれない)はじっくり考証すべき対象だが、ひとまず、本作のグラス問題はカラー化も大いに関係しており、カラーに対する小津の戸惑い・試行錯誤をの結果ではないかと指摘しておきたい。

シナリオは里見弴原作(と言っても撮影と同時並行で執筆していたようだが)であり、佐分利信と田中絹代の夫婦と、結婚適齢期の娘・有馬稲子の家庭を中心とした「父と娘」のホームドラマである。有馬稲子、山本富士子、久我美子とまぶしい3女優が揃い、佐分利・田中の演技が堅牢さを与えている(6/37/54)。
猫脳髄

猫脳髄