Vocalise

彼岸花のVocaliseのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.4
胸がいっぱいになりすぎて
喉のあたりまでずっと苦しかった
どっと涙を誘うでもなく
こんな形の大きな感動があるんだと…

小津監督初のカラー作品ではあるけれど、定番ともいえる家族のお話。
年頃の娘の結婚話を軸とした家族模様。

言葉足らずで、不器用で、頑固で、
絵にかいたような所謂昭和のお父さん。
だけどだけど、お父さんなりの想いはあるわけで、それが特に後半、相変わらず直接言葉にはしないけれどどんどんどん溢れてきて伝わってくるものがあって…
愛情がわかって感動したというよりも、どこまでも孤独にみえてしまうお父さん像がどうしようもなく切なくて愛しくて本当に胸がいっぱいで堪らなくなりました。

そこに同窓会というものをもってくるところの巧さは凄いです。
男どもの呟きと共感、そして詩吟。
子には勝てない父親たちの敗北。

けれどお母さんは全能でした。
すべてを解ってくれているのは妻であり母であり、
その顔のアップだけで語り尽くし、示してくれる安心安全の印。
お母さんがいてよかった。
要はいつもお母さん。

トリックというのも洒落ていてよかったです。
そして時折きかせる赤の色。
特に終盤京都に切り替わったときの小路をくる幸子の着物の赤は、構図の美しさと相まって息をのむほど見事なものでした。

初カラーにして大成功した傑作だと思います。
Vocalise

Vocalise