ちーやん

ハート・ロッカーのちーやんのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
4.0
イラク戦争での爆弾処理。爆弾の解除作業、砂漠での狙撃戦、登場人物の目線にアングルがあって緊迫感を体感できる。息をするのを忘れてしまいそうだった。また、女性監督が作ったとは思えないほど男臭さが描かれていた。

戦争は麻薬のようなもの。
皮肉な言葉だと思う。この作品は戦闘シーンだけでなく、戦争が及ぼす人間の心理を爆弾処理班の主人公に焦点を当て描かれているのが新鮮だった。
特に、ジェームスの理性と本能の混在が垣間見えるシーン。自宅へ帰っても妻と話すのは任務中の出来事。買い物に行っても、常に生死の狭間で孤独に作業している彼は集団行動ができず妻とは別の買い物カートを押す。ぎっしり並べられた何種類ものコーンフレークが何の危険性もなく選べる状況に漠然と立ち尽くす。自分が満たされる居場所はここにはない。
家族への愛、仕事での地位、爆弾解除作業を遂行した時の達成感、任務期間を生きて脱した時の快感、どれも彼にとって大事なものであり必要なもの。しかし、実際の所息子の笑顔より、彼を満足させるのは爆弾処理後の達成感。結局、ジェームスは本能のままに再び戦地へ戻っていく。
道理的に何を優先すべきか分かっているからこそ、罪悪感を持ちながら本能に惹かれる彼の人間らしさが出ていた。戦争に対し、違う視点から色々考えさせられる作品だった。
ちーやん

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