ブラックユーモアホフマン

キング・オブ・コメディのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.5
コメディアン版『タクシードライバー』。『タクシードライバー』ってよく、ベトナム帰還兵の話だって言われるけど、これを見ると、スコセッシは別にそういう直接的に社会問題を扱った映画を撮ろうと思って作ったわけじゃないんだろうな、っていうのが分かる。
話の内容はほぼ同じだと言っていい。世界を愛したかったのに、世界に愛されなくて、でもすぐに結果が欲しいデ・ニーロが、次第に被害妄想的に社会に対する憎しみや怒りを募らせていって、思い切った行動に出てしまう。その狂っているとも言える行動は皮肉にも社会に英雄的にとらえられる、という話。
これを観ると、そういう話が『タクシードライバー』でも核だったんだな、というのが分かる。
『タクシードライバー』は傑作だけど、こっちもかなり良い。面白い。
日本版の宣伝文句にもなっている、「どん底で終わるより一夜の王でありたい。」というのも名ゼリフ。

実は『ラ・ラ・ランド』のような話だと思う。つまり『タクシードライバー』も『ラ・ラ・ランド』ということになる。正攻法で成功してしまう『ラ・ラ・ランド』よりも、皮肉っぽいオチになってるこっちの方が俺は好きだな。
虚実入り混じって、途中から観ているものが妄想か現実か分からなくなるというのも面白い。『CURE』みたいな。ちょっと違うけど笑 男の狂気にも近い切実さが感じられる。