みち

キング・オブ・コメディのみちのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.5
──ドン底で終わるより、一夜の王になりたい。


妄想なのか現実なのか、わからなくなっていくのが怖かった。あまりに「普通でない」行動を(妄想だろう)と思って見ていたら現実だったり、その逆であったり。

途中から、成功しようともがく主人公ではなく、成功している彼の憧れの対象がファンに付き纏われ、苦悩する姿の方に同情してしまった。憧れる側は自己中で、憧れられる側は苦労するよなあ、と。

そうやって主人公から気持ちが離れていったはずなのに、最後の方で不意に引き戻された。ああそうか、君はそういう境遇だから、人前で一発見せつけてやりたい、自分を認めてもらいたいと、狂おしいほどに思ったのだね、と急に強い共感が湧いてきた。映画なのだから、しでかしたことの是非はここでは言わない。ただ、最初から最後まで、なんて真っ直ぐな気持ちを貫き通した男だろうと、気持ちが入ってしまって、それでつい、最後のシーンが現実であったらなあと、願ってしまった。

いろんな意味でこわい映画だ。
みち

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