うめ

キング・オブ・コメディのうめのネタバレレビュー・内容・結末

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 デ・ニーロ×スコセッシのコンビによるブラックコメディ。この時期のスコセッシにしては珍しい作品。ただデ・ニーロを使っていることもあってか、やっぱりスコセッシだなと思わせる演出やストーリーだった。
 しかし相変わらずデ・ニーロの演技がすごい。コメディアンとして売れない日々を送る主人公ルパート・パプキンを演じているのだが、あの、実際にいたらちょっとめんどくさいなっていう人当たりをあの服装、体格、ひげ(笑)からしゃべり方、しぐさまで全てで演じ切っている。やっぱりすごい、デ・ニーロ。
 コメディというか、少し哀しい話だし、現実的な話でもある。パプキンは、どうにかして人気コメディアンのジェリーに自作のネタが入ったテープを聞いてもらい、良ければジェリーのテレビ番組に出演させてもらう約束を取り付ける。だが、実際それは、うっとうしいファンを追い払うためのジェリーの口実に過ぎず、結局テープを聞いてさえもらえなかった。そこでパプキンはジェリーを誘拐することで、強引にジェリーの番組に出演する…。実際にこうやって、スターを目指す人はいるのだろう。パプキンもスターに憧れ、自室にたくさんのスターのパネルを置き、サイン帳を持ち歩き、ジェリーと同じように上下セットのスーツを着る。ネタもそこそこ面白いと思われる。ただチャンスを待っていたのだ。そのチャンスがジェリーとの約束だったのだ。ただ結末をみると、そのチャンスに飛び込んで、それをモノにするかしないかは自分次第、ということか。またスターになりたければ、極端な話、犯罪でもして頂点に登り詰めろということなのかもしれない。
 しかし、ジェリーの立場も分かる。スターになったが故の苦しみ。決してキレイじゃない世界、芸能界で生きていくための方法…。もちろんジェリーがパプキンにああしてあげれば、こうしてあげれば、なんて話いくらでもできるだろうが、この作品のテーマはそこにはないだろう。ジェリーの番組を取り仕切るトマスがジェリーを誘拐した犯人であるパプキンが出演していても放送すると言ったように、ショーが優先、エンターテイメントが優先。そんな世界でパプキンがどう生きていくのか、気になるところではある。
 また、ジェリーとパプキンの口喧嘩の様子はスコセッシ作品なら「あぁ、あるある」っていう感じだし、パプキンの現実と理想が入り交じる、面白く哀しい演出はとても良かった。スコセッシらしくないようで、スコセッシらしい作品だった。
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