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にがい米のHKのレビュー・感想・評価

にがい米(1948年製作の映画)
4.8
本作品では、嘗てのイタリア農業を根底から支えていた勤労を通した集団的な苦楽がネオリアリズモ調に描かれている。一方で、そんなものは時代錯誤的で鬱陶しいものに過ぎないと、いわば忌むべき存在として捉えるのが現代人なのかもしれない。我々は“ある地点”を境に、労働という概念を狂気なまでに忌避する人種になってしまった。そんな状況下において、我々が彼女たちのように勤労の尊さを学び得る術はどこにあるのだろうか。要するに、我々はシルヴァーナ・マンガーノがスカートを捲し上げる姿に対して官能美などを感じてはいるものの、彼女たち女性労働者が共有している基本的な価値観については、全くと言っていいほど理解が及んでいないのである。コメ粒一つから労働の喜びを見出すモンディーナ、仕事を避けては娯楽に浸る我々現代人、果たして、本当に貧しいのはどちらなのだろうか。そんなことを考えさせられる作品である
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