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ミラーズのswansongのレビュー・感想・評価

ミラーズ(2008年製作の映画)
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これは 「鏡」 に関する私の個人的体験を綴ったものであり、本作品との直接的な繋がりはありません。

お時間のあるときに、おつきあいいただければ幸いです。


「 … タスケテ、タスケテ … 」


Day 1:"赤羽事件"(※1 )から数週間後。

199X年の蒸し暑い夏が、まだまだ続いています。

私は桜上水に住む同郷の友人U君をひさしぶりに訪ね、深夜の駄話に耽っておりました。

「だはは、ちゃうちゃう。
"注射器ぷす "がゾンゲリアで、"木片ぐちゅ "がサンガリアやろ。」

週末の午前2時。
野郎ふたりのバカ話は盛り上がっているものの、実は先ほどから私の心は、徐々に落ち着きを失い始めています。

カーペットに寝転がってひじをつき、ベッドの上の U君に向かってしゃべっている私の背後から、何やら形容しがたい不穏な「気配」が迫ってきているのです …

京王線の駅前商店街からも甲州街道からも近い賑やかな立地。

女子力高いU君の明るくて小綺麗な部屋のなか、しかも饒舌なホラー好きがふたり。

"赤羽事件"のときとはちがって不気味さなど微塵も感じさせない状況であるにもかかわらず、なんとも言えない恐怖心が、私のなかでどんどん膨らんでいきます。

物理的に何かが起きている訳ではなく、「気のせい」 の一言で片づけてしまえばそれまでなのですが …。

「何を言うてんねん。
サンガリアは缶コーヒーで、あれはサンゲ ……?」

"西の人"にしか通用しない私のボケに的確にツッコミかけたU君が急に言葉を飲み込んで、真剣な面持ちで私に問いかけます。


「 なあ、… なんかさっきから"イヤ~な感じ" せえへんか …?」


!!この「気配」を感じているのは私だけではない …

そうわかった瞬間、文字どおり背筋がゾッとしたのを覚えています。

「 お、おお。そやねんそやねん。
なんか "とんでもなく不吉なもの" が近づいてきてる感じやねん。
Uちゃん、お前もか 。」

「 うん、そやねん。
… なあなあ、その "イヤ~な感じ"って、どっちの方角から来てはる?
ふたり同時に指差してみようや。
いくでぇ。せえぇの ……

! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !

… ウソやろ。
ふたりの指が、 ぴったり「同じ方向」を指してる …


まるでその不謹慎な行いに反応するかのように、部屋のなかに充満する「気配」の密度が急激に高まり、耐え難い息苦しさが私たちに襲いかかります。

すうーっと照明が弱まり、室温が少しずつ下がっていくような奇妙な感覚とともに …


「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い …」

「 タスケテ… 誰かタスケテ … 」




「桜上水事件 : 後編」 (※2 )に続く。
※2 → 「ミラーズ 呪怨鏡」に収録


※1 → 「事故物件 怖い間取り」 に収録。


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