半兵衛

電送人間の半兵衛のレビュー・感想・評価

電送人間(1960年製作の映画)
3.0
『透明人間』をはじめとする東宝変身人間シリーズのなかでも機械の力で遠距離を移動するというリアリティのある設定ではあるが、特撮に頼ろうとしない作品の姿勢と地味なビジュアルのためかえって他の特撮作品よりも見ごたえがなくなっているのも事実。おまけに怪物である電送人間は転送装置が置かれていないと移動が出来ないというとんでもない弱点があるので、のび太並に自分の力では何も出来ないまったく魅力のない怪物になってしまっている。

あとあんな馬鹿みたいに大きい転送装置をまったく見つけることができない無能にもほどがある警察、本業の雑誌記者としての仕事をまったくせず電送人間による事件を独自に調べ都合よく警察に知人がいるとしれっと捜査に加わるといういくらプログラムピクチャーとはいえども無茶すぎる設定の鶴田浩二など見ていて醒めてしまう設定がちらほらあるのも気になるが、一番謎なのがヒロインである白川由美。電送人間との関係性もよくわからないし、あんなに都合よく電送人間絡みの事件に巻き込まれていたのにラストはまったく登場しないって意味がわからないよ。それにミステリーとしての語り口が古臭い、ハッタリめいたものなのもマイナス。

でも電送装置が作動する際の説得力のある映像や、いかにもそれっぽいマシンのビジュアルは好き。そんなSF設定にも関わらず銃剣を武器として使用する電送人間の不器用さも人間臭くて嫌いになれない。あとそんな不気味な男を演じる中丸忠雄の熱演も最高。

ちなみにこの作品を監督した福田純は、後に円谷プロで『怪奇大作戦』の一編で絵が特殊電波の影響で現実に出て来て殺人を犯すという『殺人回路』の監督を担当することに。市川森一の脚本をかなり変えてしまったため市川本人からは恨まれることになるが、絵の人間が現実にあらわれるという設定を自然に映像として成立させる手腕はさすがベテラン監督。
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