ひでぞう

黒衣の花嫁のひでぞうのレビュー・感想・評価

黒衣の花嫁(1968年製作の映画)
4.8
「The Bride Wore Black」:Mr Fat - W Video(販売元)版で視聴した。海賊版のような画質の悪さにはがっかりしたが、英語の字幕があるので、なんとか見ることができた(日本版が高すぎる)。
 全く無駄のない構成。素晴らしい。ウールリッチの原作では、「女」が誰なのか、文章では「謎」のまま維持できるし、それをトリックにも使える。しかし、映像にしてしまえば、それは「顔」がスクリーンに映されるため、同様の「謎」を維持することができない。トリフォーは、その難点を回避し、逆に映画であるがゆえに、「顔」に焦点をあわせて構成する。例えば、油絵に描かれた、ジュリー(ジャンヌ・モロー)の「顔」は切り抜いて、証拠を残さないようにしたのに、ソファーの後ろの見事なヌード絵の「顔」は、何故黒く塗りつぶさないで、証拠にしてしまったのか、ということなど。Pierre Guffroyの手にかかる、このヌード絵は、鮮烈な印象を残す。原作とは異なった展開とラストには、映画で描くことの意味が、はっきりと提示されている。さすが、トリフォーである。なぜ、Blu-rayの映像で発売しないのだろうか。

追記)IVCの『フランソア・トリフォー』のボックス版で、再視聴した。さすがにBlu-rayはすっきり見える。しかし、逆に、ジャンヌ・モローの衰えが気になってしまう。確かに、トリフォーが失敗作とする理由も理解できる。やはり、カラーではなく、モノクロにすべきだったか。モノクロの『マドモアゼル』のモローが崩れゆく美しさを体現していると思っているからかもしれないが……。そういえば、BFIの『Mademoiselle (Dual Format Edition)』で、Blu-rayのものを視聴したが、これは、DVDとあまり画質が変わらないように感じたが、どうだろう……。
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