よっちゃん

河と死のよっちゃんのレビュー・感想・評価

河と死(1954年製作の映画)
3.5
大河の流れ、人の性行動、家畜の群れなど、ブニュエルはシンプルで単調なものの描写に「死」を関連付けることで、生の中途に訪れる死の刹那性、偶然性ではなく、死自体の持つ永久性や不可避性を強調する。映画内の煌びやかな衣服や奇怪な儀礼は、その複雑さが人間を人間たらしめるというより、人の行い全ては死への恐怖に由来すること(=単純性の回避)を示す。死を想起させる壮大な"単調構造"を越えた先(本作では川の対岸)では、新たな「生」が許される。復讐の連鎖を起こす村の奇習と、死へのトラウマを抱える村民感情は矛盾に溢れており、それは都市から帰省したヘラルドと母メルセデスのやり取りにもよく現れている。死へ近づき乗り越えることが人間らしさなのか、死から逃げることが人間らしさなのか、ブニュエルは答えを出していない。おそらく、そのどちらでもないからである。
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