はんそく負け

人情紙風船のはんそく負けのレビュー・感想・評価

人情紙風船(1937年製作の映画)
3.7
モノクロなのに抜けるような青空、そして雨。あるいは静寂と喧騒が交互にくることで世間の明暗をくっきりさせる。格差というだけではなく、同じ貧民だろうと人生には明暗というものが付き纏うわけで、中村翫右衛門と河原崎長十郎の対比に「君たちはどう生きるか」と問いかけられる気がしてくる。
「二度と」「必ず」「すぐ戻る」といった文言がむしろ必ず果たされないシナリオの妙も素晴らしい。それにしても長屋の奥に見える樽の積まれた倉庫のような場所はなんなんだろう。いずれにしても目を見張る奥行き表現。