がちゃん

映画に愛をこめて アメリカの夜のがちゃんのレビュー・感想・評価

4.2
僕は、映画のバックステージものが好きなんです。
「イヴの総て 」しかり「サンセット大通り 」、
さらにはフェリーニの「81/2 」なども、そのジャンルに入るかもしれない。

これらの作品は、映画に携わる俳優や監督など、
個人に焦点を当てて作られていたのに対し、
この作品は、まさに映画撮影に関わる俳優スタッフまで描ききった、
群衆スケッチともいえる作品です。

ある映画の撮影現場。
予め決められたスケジュールの中で、
作品は作り上げなければならない。

だけど現場はハプニングの連続。
アル中気味で、セリフを覚えられない女優。
妊娠がバレてしまうので、水着になりたがらない女優。
思うように動いてくれない猫など、その度に撮影は中断。
監督(トリュフォー自身)は、頭を抱えながらも、
作品を完成させていく。

そこは本当に人生の縮図のようで、
出会いがあり、別れがある。
撮影も後半に入っていくと、
全員家族のようになっていくが、
撮影が終わると、何もなくなってしまう。

監督が参考にするために取り寄せる書籍が、
ベルイマンやヒッチコック、ホークスなど、
映画ファンなら思わずニヤリとするでしょう。
少年時代の監督が夢の中で、
「市民ケーン」のスチール写真を盗んでしまうなんてシーンもある。

とにかくこの作品は、
すべての映画に携わる人間へのオマージュだ。
映画のラストクレジットに出てくる、
小さな文字で紹介されるあらゆる人たちすべて。

映画ファンならきっとほっこりとする、
そんな優しく嬉しい作品でした。
がちゃん

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