Jeffrey

あげまんのJeffreyのレビュー・感想・評価

あげまん(1990年製作の映画)
3.0
「あげまん」

冒頭、捨て子だった女。老夫婦に育てられ芸者の道へ。不運続き、悪夢、お座敷での再会、石ころの心、生首、ダメ男、着物、大金、指輪、満員電車。今、彼女に関わる男たちの葛藤を描く…本作は平成二年に東宝配給で、伊丹十三が監督と脚本を務めた長編五作目で、主演は引き続き宮本信子で、信子の小唄の師匠の話を伊丹十三が聞き映画化し、当時あげまんと言う言葉が流行語になった作品である。本作から山崎努が連続して作品に出てこなくなる(静かな生活から復活)。本多俊之のあげまんのスコアが最高に良くて、サントラを聴いている今も。さて、物語は捨て子だったナヨコは老夫婦に育てられ、やがて芸者の道に進むことになっる。一人前の芸者となった彼女は、僧侶の多聞院に水揚げされる。 ナヨコと暮らすようになった多聞院はめきめき出世してゆくがやがて病死してしまう。その後、彼女は銀行のOLとなり、銀行員の鈴木主水と愛し合い結ばれるが…と簡単に説明するとこんな感じで、ヒロインと彼女に関わる男たちの葛藤を軽快なタッチで綴った作品。

いゃ〜、この作品に出ている宮本信子はこの時点で初めておっぱいを晒した。そしてこの作品の彼女はとてもグラマラスでセクシーで美しく輝いている。少しばかり厚化粧しているからかもしれないけど。このあげまんと言う女は男を丸ごと受け入れてくれるような母親役になっていると感じる。というか日本の男と女っていうのは男と女の関係は最初のみで、そこから母的な依存に変わるんだなと、そう感じたまでである。それはイタリア映画を見てもそうだし韓国映画を見てもそう感じる。というか全世界共通ではないだろうか…。この映画何が面白いって、主人公のあげまんの女ナヨコの純愛物語をベースに、政治家の内幕だったり、料亭の密室政治だったり、芸者世界やOLの生活にフォーカスして、そういう多彩な舞台を背景に彼女はひたすらー人の男を愛すると言うのに突っ込んでいき、その愛する男は一応は仕事のできると自立した人物だが、中身を見てみると子供同然と言うところが非常に良い点をついていると思う。多分監督は日本の男そのものを津川演じる男に投影したんだと思う。結局その男が自立できるのかできないのかを説いている。

その津川雅彦と宮本信子のクローズショットなどすごく印象的で、愉快で奇想天外なお芝居は監督自身マストロヤンニとジャンヌ・モローで映画を撮っている気分だったと後に言っているほど二人を大絶賛していた。多くの役者が出演しているのにみんな滞在時間が短いが印象残す人たちばかりである。本作は今までの作品と違ってセットと衣装が最高レベルで良くて、完全主義を爆発させたような映画である。特に着物は言うことなしで、現役の一流の芸者さんが見ても圧倒されるかのような着物を着こなしていた宮本信子は本当に美しかった。そもそも宮本信子は前から芸者の役をやりたかったと言っており、年齢的にもこれ以上遅いと厳しいと言うことで今回監督が配慮したのかもしれない。しかも本編では十六歳の役まで彼女自身が演じていてびっくりした。そういえば本作の犬飼役で出演していた宝田明は十年ぶりの映画で一九〇本目の映画にあたり伊丹映画に初めて参加したと言っていたような気がした。

この映画って彼の作品の中でもハッピーエンドがー番いい感じに作られているような気がする。基本的に伊丹映画っていうのはハッピーエンドものばかりだが、宮本信子が色っぽくて暖かい映画で、いろんな素材のエピソードが入っていて、社会派の映画と思いきやそんなこともなくて、人間に対する観察力の鋭い作品で日常描写が描き出された人間喜劇としては秀作だろう。そういえば宮本信子の赤い襦袢姿から黒い着物になった瞬間も美しかった。どちらかと言うと大人が楽しめるような映画が、主人公たちの純愛ぶりは若者の恋愛映画を見ているかのようでほのぼのとするし、日本の自然風土や建物や着ている物の素晴らしさが贅沢に伝わってくる映画ではある。

本作に出てくる言葉の意味が伝わらないと何を言っているのかわからないと思うので、自分が知ってる限り少しばかり豆知識として伝えたい。まず半玉と言うのは十二歳から十六歳までのいわば芸者の研究生のことで、玉代つまりギャラが一人前の芸者の半分であったことからこの名がついたが、現在は半分と言う事はないし、年齢も上昇した。京都の舞妓さんも半玉である。続いて浅い川と言うのも出てくるが、これはお座敷遊びのーつで、浅い川なら膝までまくる。深くなるほど帯をとく…と三味線や唄で芸者が着物の裾をまくりあげることを強制される残酷踊りのことである。続いて置き屋という言葉があるが、芸者を抱えておき、料亭からの迎えに応じて差し向ける商売。今風に言えば、芸者のプロダクションで、近年次第に姿を消し、今は芸者が自分のマンションに電話を引いて個人で営業するような事前の型式が多い。んで、日の出盛と言うのは、酒を作っている京都伏見の松本酒造から五万本限定であげまんと言う名のお酒が発売された時の名前だ。この作品国の重要文化財である大倉邸が舞台になっているのは驚いた。最後にちょっと破廉恥なことを言うようだが、宮本信子のおっぱいってめちゃくちゃ綺麗だな(笑)。
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