日本映画における『女優』の素晴らしさを感じられる作品。
(以下、敬称略)岩下志麻、桃井かおり、山田五十鈴。
ここに大竹しのぶさんが加わったらコンプリート!となるのだろう。(笑)
松本清張原作作品であり、タイトルの『疑惑』はそのタイトル通り。
疑惑を向けられた一人の女性と、彼女を弁護する弁護士の話。
ノーブレーキのまま海に車ごと突っ込んだ夫婦であったが、泳げない夫は死亡し、妻だけが車から飛び出し助かったという事件が発端。
夫に3億の保険金がかけられていたことから、妻の偽装殺人という疑惑がかけられる物語である。
『悪女はほんとうに悪女なのか?』
という視点で見ていくため、映画全体が謎解きになっている。
原作が松本清張なので、ストーリー性のわかり易さと面白さは鉄板。
そこに女弁護士(岩下志麻)と水商売あがりの富豪の後妻(桃井かおり)のかけあいが、また物語を熱くさせる。
ただ単に、疑惑の謎解きだけでなく、マスコミやうわさ話程度の情報の不確かさ、そして真実の分からなさを、人元模様を絡ませながら展開するので、中だるみせず観ることができる。
物語の本筋は、結果、容疑者が白か黒か?という点にはなるのだが、その裏側には、ちゃんと2人の女の生き様を対比させるように描かれている。
弁護士の岩下志麻さんの白いスーツにワインをかける演出が良かった!渋い。
法定論争が罪状の勝ち負けなら、女弁護士と疑惑の未亡人の人生の勝ち負けはどうだったのか?と考えさせられるなど、法廷もののようでありつつも、ヒューマン・ドラマが流れている辺りも面白い。