麻薬捜査のガサ入れの最中に見張りの警官が射殺され、拳銃と警察手帳が奪われるという事件が起きる。犯人は新聞の印刷工をしている伊達邦彦(木村一八)で、彼は幼い頃に両親を殺されてから、金と武器しか信用することができなくなっていた。その後、射撃の腕をいかし、盗んだ拳銃を使って上海マフィアの大幹部・チャーリー陳から大金を手に入れた伊達は、次に病気のため会社を首になり自暴自棄になっていた元同僚・真田を仲間に引き入れ、銀行の現金輸送車を襲撃する。ところが、犯行の途中に真田が吐血して倒れた。分け前は残してきた妻と子供に渡して自分を殺してくれと頼まれた伊達は、真田を射殺してその遺体を焼く。盗んだ3億円を闇ルートで金塊の権利書に変えた伊達は、恋人の久美子と逃亡を図った。ところが、殺したはずの陳が一命をとりとめていたことがわかり、伊達は陳の息の根を止めるために、彼が入院中の病院へと急ぐ。しかし、そこには伊達が殺した刑事の同僚・大山が事件の全容を嗅ぎ付け、伊達の現れるのを待ちかまえていた。伊達は大山との勝負に勝ち、病院内に侵入して首尾良く陳を殺害する。再び久美子と逃走した伊達は、「本当はあなたを殺したいと思ってるの」という彼女の言葉を聞き、久美子の額へ向けて発砲した。
今まで三回映画化されている大藪春彦のハードボイルド小説「野獣死すべし」を木村一八主演で映画化した２部作の前編。
松田優作主演の「野獣死すべし」が原作とかけ離れた内容だったことに大藪春彦が激怒し、遺族の意向でセリフやストーリーを原作通りにすることを条件に映画化されたこともあり、今までの映画版の中でかなり原作に忠実なストーリーと世界観はまさに大藪ハードボイルドの真骨頂。
リアルなガンアクション、人間を信じず銃しか信じない伊達邦彦の冷徹なハードボイルドなキャラクターを演じ切った木村一八の好演が、カッコいいハードボイルドアクション映画。