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風を見た少年のmitakosamaのレビュー・感想・評価

風を見た少年(2000年製作の映画)
3.0
c.w.ニコル原作のアニメって…公開当時とても唐突に感じたなぁ。なぜニコルの小説をこんなに力入れて作られたんだろう。タレント声優もいっぱい投入したし制作委員会は勝算があったのかな???

アニメーション制作はブレインズベース。良く知らないスタジオだけど東京ムービーの系譜らしいね。
しかも映像的に凄い良く出来てる。初の劇場用作品として気合いが入ってたんだろうなぁ。

世界観は近代ヨーロッパ風。独裁者ブラニックが支配する軍国主義がはびこる中、不思議な力で飛んだり攻撃したりヒーリングしたり出来る“風の末裔”の少年アモンが戦う。
科学者であったアモンの両親は殺され、助手の女ルチアがブラニックに取り入りアモンを利用しようと企む。
牧歌的な漁師町で出会ったマリアが捕らえられアモンは救いに行く。

主人公アモンが安達祐実。少年役にしては声が高過ぎるが演技は流石に上手い。ブラニックが内藤剛志。マリアが前田亜希。他にもタレントいっぱい。

しかし、物語が圧倒的に暗くて重い。イギリス人のニコル的にはブラニックは当然ナチスドイツの隠喩であろう。
故に軍国主義の冷酷さがこれでもかと展開される。結構子供がボコられる描写とかが多いんだよね。
また、漁師町の描写で獲物を食べることへの感謝云々が語られるが、これも捕鯨推進派だったニコル氏の思想を表していると思う。
ニコル氏の政治的・思想的アイデンティティがとっても反映された物語だということが判る。

以下ネタバレ↓


そして何より主人公が死んじゃうという身も蓋もない終わり方。うーん、冒険ファンタジーとしては引く様な展開の果てに結局救いも無い。最後にマリアがアモンの意志を継いで前向きに生きようとするが、そう云うことじゃないんだと思うけど…。少なくとも娯楽大作としてのアニメーション映画の正解では無かったと思う。
これを選んだ制作委員会ってホント何を考えてたんだろう?圧倒的に企画がダメだったんじゃないだろうか?アニメ制作が頑張っているだけに勿体無い。
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