このレビューはネタバレを含みます
ノアは人を頑張って愛する才能に長けていた。
「うまくやるのは難しい。努力が必要だ。でも俺は努力したい。ずっと君が欲しいから。一緒にいたいから。将来を思い描いてみて。30年後、40年後……。誰と一緒だ? もし奴なら行け! それが君の望みなら俺は耐えていける。無難に選ぶな」
こんなことを言える男はこの世にいるのかな。しかし、これは正しいのか。
性格が不一致でもなお一緒にいたいというのは果たして愛なのでしょうか。
一致する人と穏やかに愛を育むか不一致の人と頑張って一緒にいるのが愛なのか。
愛とは難しいですね。
どれだけ深く致命的に失われていても、どれほど大事なものをこの手から簒奪されていても、あるいは外側の一枚の皮膚だけを残してまったくちがった人間に変わり果ててしまっていても、私はこのように黙々と生を送っていくことができるのだ。黙々と愛し私が私たり得なくてもなお。手をのばして定められた量の時間をたぐり寄せ、そのままうしろに送っていくことができる。日常的な反復作業として。場合によってはとても手際よく。そう考えると私はひどくうつろな気持ちになった。