【第55回カンヌ映画祭 監督週間出品】
『ゴモラ』『リアリティー』など最も好きな現役監督の一人であるマッテオ・ガローネの初期作。ダヴィッド・デ・ドナテッロ賞では脚本賞と助演男優賞を受賞した。
いやー、やっぱり素晴らしい。本作は1990年に実際にあった事件(ドメニコ・セメラーロ殺人事件)を元にしているのだが、ガローネの手にかかるとこうなるか!
今の『ドッグマン』など洗練された作品に比べるとリアリズムとフィクション演出の食い合わせが悪いかなという部分が散見されるものの、どんどん物語に引き込まれていく感じは流石マッテオ・ガローネ。
目をつけられた若くハンサムな青年が小男によって運命を狂わされていく話なのだが、小男ペッピーノの哀れさの方が強く感じたし、監督自身それをこそ描きたかったんじゃないかな。
ペッピーノの怪しい言動が気持ち悪く、ヴァレリオがペッピーノのペースに否応なく引き込まれてしまうのをごく自然にみせている。
実際はあの後遺体が発見されて懲役刑を言い渡されている。
もちろんヴァレリオとデボラにとっては邪魔者ではあるのだが、ペッピーノの言うことに乗せられてしまうヴァレリオにも責任がある。
ああしか生きられなかったペッピーノの報われなさが不憫でならない。彼も彼で愛する人を求めただけなのに。
これはぜひ観ていただきたい。イタリア映画祭ありがとうございます!