デニロ

ゆきゆきて、神軍のデニロのレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.0
1987年公開作品。公開当時、渋谷の旧ユーロスペースで観た。今、何かもの凄いものを観ているんじゃないかと興奮したのを覚えている。奥崎謙三という人のことは、天皇パチンコ狙撃事件とか皇室ポルノビラとかで知ってはいたけれど、その実像はとんでもないものでした。監督原一男大丈夫かと心配したものです。

今回、国立映画アーカイブの特集「1980年代日本映画――試行と新生」の一篇として再見。あれから30年も経っているのかと思ったのだが、冒頭からイライラしている自分を感じる。戦争中ニューギニアであった日本兵射殺の真相を調べに元上官を訪ねる奥崎謙三が何を言っているのか全く聞き取れない。加えて、奥崎謙三に同行している彼の戦友の弟、妹がエキセントリックにまくしたてる。奥崎謙三も徐々に興奮し始めて三者三様対象の元上官の言葉も聞かずに、もはや会話になっっていない。ふと、イライラの原因は、勤め先でもこんな人がいるなあと、そんな事を思ってしまったことなのかもしれぬ。

その後、奥崎謙三は元上官同僚たちを訪問する際に友人や自分の妻を戦友の兄や弟と称させて連れていくのだが、そんな彼らを観ながら冒頭に連れ添っていた戦友の弟、妹ももしやするとと感じるものがあった。何しろ企画として稀代の詐術師今村昌平が絡んでいるのだ。容易く信じるわけにはいかない。仕込みで奥崎謙三を騙し、知りうる情報を散りばめ誘導したのではなかろうかと。彼の直情径行を利用する。

が、奥崎謙三は何かに気付いたかその事実の追求に邁進していく。ニューギニアで起こったことなど話したくもない元上官兵士たちに訳の判らぬ理屈を並べ立てて執拗に迫る。この辺りからイライラを忘れ、彼の行動に没入してしまう。傍若無人を実は演じているようにも見えるのだがラストで驚愕の事件が紹介される。

そして唐突に終わるのです。え、もう二時間経ったの?
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