ゆきゆきて、神軍の作品情報・感想・評価

「ゆきゆきて、神軍」に投稿された感想・評価

酒

酒の感想・評価

4.5
ヤバイとしか言えん。
とにかくヤバイ。
ヤバイドキュメンタリー。
衝撃すぎるドキュメンタリー映画。
こんなのは初めてでした。

何が正しいのか分からなくなる狂人ドキュメンタリーでした。

このレビューはネタバレを含みます

 かつての所属部隊で隊長による部下射殺事件があったことを知って真相究明する奥崎謙三の話。

 冒頭から結婚式の仲人の挨拶で自分が前科者だと発表して、周りがドン引きする姿からすごくて、奥崎謙三というキャラクターがぶっ飛びすぎていて圧倒される120分でした。

 自分が天皇にパチンコで狙った話を毎回して、相手を脅す姿がどんどんと笑えるコミカルなものに見えてきました。
 それでも射殺事件に関わったとみられる人物たちものらりくらりとはっきりと言わずにかわす姿もくせ者っぷりがすごくて、奥崎謙三に殴られたりして延々と説明責任を果たす必要性を説かれて、しだいに語る内容も戦争の地獄っぷりがわかるもので時代性を感じるものでした。

 原一男監督がよく奥崎謙三という人を見つけて、彼を主演にしてドキュメンタリーを撮ろうというものの勝利の映画だと思いました。
ジワジワと引きこまれた。
おもしろい。
観終わった後のなんとも言えない気持ちになる感じもいい…
何度も観るもんじゃないけど1度は観るべきって感じ。
ジョン

ジョンの感想・評価

3.0
ドキュメンタリーだから演出とかなくて退屈かもしれないけど話自体はとんでもない
黒豚、白豚のシーンが衝撃です
奥崎謙三の内に秘めた狂気が素晴らしい
凄まじい激情のエネルギーが炸裂したドキュメンタリー。証言を引き出さんとして暴力に訴える奥崎謙三は、完全に戦場に狂わされてしまっている。
昔から存在は知っていた本作。昭和天皇にパチンコ玉を撃った男としては聞いていたがDVD裏面の奥崎謙三事件録を見ると一番上に書かれているのが「不動産業者を傷害致死 懲役十年」というもの。これは思っていた以上に只者じゃない。映画が始まると映るのは奥崎家のシャッターに書かれている「田中角栄を殺すために記す。人類の啓蒙の手段として」の文。バリバリの右翼はもちろん、左派のですら全盛期の極左でもなければ引いてしまう人柄。そんな奥崎氏の過激な戦争責任追及を追ったドキュメンタリー映画である。

奥崎氏が追うのは終戦後に処刑された兵士について。戦地はニューギニア。『軍旗はためく下に』や『野火』など、この辺の戦況について語った映画は結構あるのですぐ察しがつく人も少なくないだろう。日本軍による人肉食とその責任者がテーマとなる。様々な下士官に話を聞いていくが、誰しも自分が殺して食ったなどと告白したいはずがなく、事の真相は分からない。その中で分かるのは敵兵を白豚、現地人を黒豚と呼び白豚の方は流石に敵兵を食べるのはマズいと控えられ、黒豚の方にしたって疲弊しきった日本兵には捕まえることなど到底できなかったということ。では誰を食べていたのか。友軍の下っ端から。それを個人ではなく部隊主導でやっていたおぞましさに今までのカニバルをテーマにした戦争映画のどれよりも戦慄を覚えさせられた。

気の弱く戦争を知らない私などは加害者の彼らも戦争の被害者だと同情的になると思う。しかし地獄の実戦経験者で戦中に上官を殴っていた容赦のない奥崎氏は徹底的に加害者としての責任を突きつける。感情を表に出して暴力行為に及ぶこともある。ニューギニアの戦記をまとめた山田元軍曹にも「靖国に行って英霊が報われると思うのか貴様!」と手が出た所は彼の国家が責任を有耶無耶にして行う慰霊への態度が明白になる。同行していた遺族が途中で突然いなくなって代役を立てるが、同梱の製作ノートによると奥崎氏と揉めたらしい。監督はじめ製作スタッフとも和気藹々ではなかったようで、そこがまた本作をピリピリと危ういものにしていると思う。不謹慎な言い方をするとこの状況は予測不能で映画として面白い。

前述した山田元軍曹は病気で手術を受けている身だが、奥崎氏は彼に平然と天罰が下ったと言う。自分自身も人を殺す咎を背負ったことなどを天罰と言い、戦争に参加して人殺しをした自分らは皆罪人だという意識がある。だからこそ命令する立場にあった上官やその頂点に立つ天皇が戦争責任を負わないことに余計に強い憤りがあり、それを明確にして自覚することが平和への意思と思っている。しかし今では似非愛国者が歴史を都合良く捻じ曲げ他国への軍事行動も厭わないかのように意気がるようになってしまった。これでは奥崎氏が報われない。彼の価値観には賛同しかねる部分が多いが、訴えた事は無視してはならない。
takuro

takuroの感想・評価

4.4
少し観るのが怖かったですが、意を決して鑑賞。

奥崎謙三という、まさに(国家の身勝手とも言える)戦争が生んだ、類稀なく、他者が理解し得ないほどの精神と信念と正義感と行動力を持った狂人が、ただひたすらに亡くなった方々のために、真実を追っていく中で、次々と出てくる今までの虚構と隠れていた真実。

戦争下において善悪をどう判断していくのか、は非常に難しい問題ではあるが、今作では被害者(いわゆる語り部)を通して、戦争の悲惨さを訴えようとするのではなく、加害者に真実を迫ることで、戦争の悲惨さのみならず、戦争下での生きる術のなかった様や極限状態であった様が、「語り」からしっかりと浮き彫りになってきている。
描写しているわけではないが、イメージだけで痛いほどに伝わってくる物凄いドキュメンタリー。

題材としては、太平洋戦争後期にあった兵隊たちの不可解な死とカニバリズム。
兵隊たちが亡くなった理由の真実は何なのか、を当時の同じ場にいた生存者に発言してもらうために、ひたすらに行動していく奥崎謙三。

食料が底を尽きようとする中、ほとんどの人が自分が生きるだけで精一杯な状況下、そのときに亡くなった兵隊たちは不名誉な死であったと伝わっていたように見える。
本当の真実が隠れていたのでは、という疑念を奥崎謙三は放っておくことができなかった。

決して自身の遺族が亡くなったわけではないが、そんな重要なことに向き合おうとせずに、自身の罪と向き合おうとせずに真実を隠して生きている人たちを彼は決して許すことができなかった。

奥崎謙三は、決して真実を隠すことを許そうとしない。
生死を彷徨っている戦争下での誤った行動に、罪意識を持ち、そこに向き合って真実を話して生きていけというのは、何とも残酷である。

それこそ奥崎謙三自身は、自身の罪と向き合って生きることを価値観として、強い信念を持って生きてはいるが、人間はみながそんなに強いわけではない。

やってしまったことから目を背けながらじゃないと生きていけない人、真実を思い出すだけで死にたくなる人、色んな人がいるのである。
ましてや自分が生きていくのに必死な戦争下での出来事である。

そこに自分の価値観をそのまま押し付けて、全員が被害者である戦争に加害者を作ろうとする行動には、やはり個人的には理解できないことが多かった。

でもここまで本気になって追い込まないと真実というものは出てこないし、まだまだ色んな真実が隠されてきていることがわかる。

彼が行ったことは、周りから見ると理解しがたいことだらけで、おそらく罵倒されることも多かったであろうし、狂人と言われるのも仕方がない。
それでも、彼は彼自身のその正義と信念を正しいものであると信じ続けてそこだけを真正面に貫いて生きていた。

そんな生き方を彼自身は誇っているだろうし、それについてきてくれる妻や数少ない仲間がいたこと、それが救いであったであろう。

彼が一番憎んでいたのは、あんな生き地獄になる状態を生み出し、何もかもが許されるような非人道で不完全な国家に対してであることは間違いないだろうが、やはり国家の力は大きすぎるし、そこに対して抗うことは難しく、どうしようもなかった。

そこで現代を見てみる。
日本だけを見ると、当時より非人道的なことで、デモや闘争が起こること(政治思想などにおいてのデモ等はあるが)は少なくなり、暴力や事件に発展することも減っているため、当時よりはまだ万人が人間らしく生きることができるようにシステム的にはなってきているのではないか。
ただそれでも、結局は人間が介在することによって、秩序が保たれなくなっていることも多いのは事実。

理想を言ったらキリがないが、まずは「おかしいことを正しくおかしい」と言える世の中になればいいと思う。
奥崎謙三は、あの時代の中で、「おかしいことを正しくおかしい」と自分なりに訴え続けていたのは、やり方や考え方(特に正しいことをするための手段としてであれば暴力さえも正当化すること)はよくないが、意外と健全な部分もあったのかなと。
現代はおそらくそういう人が少ないし、意図的にそれを考えさせないように、考えていても発言できないようにしている組織も多いように思える。

書きあげたらキリがなくなるのでこの辺で。
また何か出てきたら追記します。

最後に、この映画は当時、あらゆる映画賞を受賞したようですが、個人的にもとても価値あるものだと感じます。

P.S.
奥崎謙三の出身兵庫県明石市って、まさかの地元同じって…!笑
原一男の生コメンタリーが初見となった。おもしろー。今で言う「ヤベー奴」なんだけど、それだけで終わらず、奥崎の言動には正義も非人道も嘘もトリックも、そしてもちろん真実も含まれている。狂人のユーモラスと劇映画のような撮影/プロット/編集で風化しない名作だった。

期限内ならまだ観れるかも
-> http://live.nicovideo.jp/watch/lv306958494
Fuhita

Fuhitaの感想・評価

4.8
ドキュメンタリーの面白さ(泥沼)に引き込んでくれた作品。映像で最も強いのは事実、瞬間を撮っていること。奥崎謙三の人間味を淡々と記録している。これを、原一男が30歳を手前にして作りあげたとは。。こういう被写体に出会いたい。
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