もにぐろ

ゆきゆきて、神軍のもにぐろのレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.5
「命令に従うだけのロボットめ!人間だったら腹を立ててみろ!不満があるなら何か成し遂げてみろ!」

奥崎氏は基本的には奇人変人狂人であるが、その言動は筋が通っていて妙に納得してしまうから恐ろしい。

戦争を遂行し、またそれを終わらせる過程においては、我々が「まあそれはそんな具合で良い塩梅にしとこう」みたいな形でなあなあにしていた部分というものがあるのだろう。

奥崎氏はその豊潤すぎる感受性ゆえに、そこに5W1Hを投げかけていくのだが、周囲の目は冷たい。
まさに、本作の中で奥崎氏に「出くわして」しまった一般人たちの反応がそのことをあらわしている。
戦後に国民が心のどこかに少しずつ抱えていた「後ろめたさ」を蒸留・抽出したのが奥崎氏だと思う。

戦時中、とある部隊内で起きた非道な事件の真相究明をする過程で、関係者が遺族に涙ながらで「真実」を証言するシーンがあるんですけど、あれが仮にもしも「彼らに都合の良い真実」だとしたら、まさに外道中の外道、鬼畜の所業です。あのシーンは注目です。

映画を観終わり、わたしは奥崎氏をどう評価するのかいまだ迷っている。ただ、共感はしてしまう。
それは、最近よく目にする「権力側からの利己的権利要求」ではなく、「権力に対する利他的真相追求」だからである。
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