悠

キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-の悠のレビュー・感想・評価

2.8
妻子に恵まれ幸せ絶頂期の警察学校に通う学生がエグい犯罪の片棒を担がされる一夜もの。
開始30分がマニラでのなんでもない日常で、その後30分はほとんど会話もない車内での移動シーン。やっとエンジンかかってくるのが開始1時間過ぎてからで、正直前半はかなり退屈しました。時間の流れを主役の視点と同期させることで没入感の高さを狙っているんだとは思いますが、たしかに没入感はあるものの、タルベーラじゃないんだしさすがにもっと短くできたはず。
娯楽性一切なしでマニラの闇社会を淡々と撮っているため映画としての面白さはなかったですが、キナタイ(屠殺)というタイトルから受ける無機質な印象の通り、観客に「魅せる」という事を感じさせない雑さからくるリアリティはピカイチでした。いっそここまでくるとネットのグロサイトに転がっているメキシコやブラジルのギャングが人間バラしてる本物の動画を観るのとあまり大差ない気もしますが、日常との対比こそに意味がある作品なんだと思います。人によってはこういう日常のすぐそこにある闇を感じる作品の方が下手なホラーよりも恐ろしく感じそうです。
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