むるそー

恋する惑星のむるそーのレビュー・感想・評価

恋する惑星(1994年製作の映画)
4.9
5月1日に賞味期限を迎える大量のパイナップルの缶詰とともに、警官223番の恋の賞味期限は切れた。喪失感から立ち直れない彼は、金髪でサングラス姿の綺麗な女性に声を掛け、2人は奇妙なひと時を共に過ごす。

同じ街のちょうどその頃、飲食店の店員のフェイはいつもサラダを買いに来る警官663番と出会う。店員として何度も言葉を交わし、徐々に彼に惹かれていくフェイは、彼が置いて行った鍵を使って家に忍び込み、自身の存在を少しづつ変わっていく部屋を通じて伝えようとする。


端から端まで全部好きな作品だった。普段意識を向けることもないような、街ですれ違うだけの人にもそれぞれのドラマがあって、この映画の4人のように一瞬を煌めいて生きているんだと思うと人間って凄く素敵ないきものだな、ってセンチメンタルな気分になる。

王家衛にとって時間が流れる速さは一定じゃなくて、でも常に流れ続けるものなのだろう。でもただ過ぎ去っていくだけじゃなくて、大切なひと時には記憶の海の中で錨を下ろすことができる。いつでも戻れるようで、もう戻れないその時間を大切に心に抱きながら、日々を生きていきたい。
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