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愛の予感のodyssのレビュー・感想・評価

愛の予感(2007年製作の映画)
2.5
【駄作の予感】

小林政広監督・主演作。 

女子中学生どうしのいざこざから殺人事件が起こってしまう。当事者の中学生はいずれも片親で、殺された中学生には父親(小林政広)、殺した中学生には母親(渡辺真起子)しかいなかった。双方の親は東京を引き払って北海道に移り住む。偶然、殺された中学生の父親が下宿する旅館で、殺した中学生の母親が賄い婦として働いていた。ふたりは会話を交わすこともなく毎日を過ごすが、やがて・・・というようなお話。

最初に当事者の二人の親がマスコミからインタビューが受けるシーンがあり、そのあとは北海道の新しい職場で黙々と働く男、下宿屋で黙々と食事作りをする女が、音声無しで延々と描かれる。この日常の描写がこの映画の最大の特質である。日常の繰り返しがこれでもかというほどに続くので、娯楽目的で映画を見る人には薦められない。

やがて、その日常にほんのちょっとした変化が起こり――男は途中まで食事の大半を残していたのがすべて食べるようになり、女もコンビニで買ったサンドウィッチ1包みとジュースしか食べなかったのがサンドウィッチ2包みを食べるようになる――、それとともに映像の足場にも若干の変化が生じる――男が下宿屋から勤務先の工場に出かけるとき、途中まではクルマの内部しか映していなかったのが、最後はようやくクルマが外部から映される――のだが、はたしてそれが説得的になっているか、ちょっと首をひねる。 

男の部屋の机の上にドストエフスキーの小説の文庫本があるが、最後まで読まれることがない。というような展開で、タイトルにある 「愛の予感」 が十分に描写されないうちに、最後に男のナレーションが入り、そのナレーションがどこかで聞いたようなセリフで、かなり浮いた印象がある。

ロカルノ国際映画祭でグランプリだそうだけれど、まあ、評論家なんかだとうれしがるタイプの映画なんだろうなあ。
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