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上海から来た女のあのレビュー・感想・評価

上海から来た女(1947年製作の映画)
4.9
流石に初っ端急転直下すぎる一目惚れと、あまりに流暢すぎるマイケルの肉体言語が少々バカっぽくて面白くなってしまっていましたが、印象的な顔のモンタージュがスリルを損なわせない傑作でした。

タバコを灰皿まで持っていく手が自然と画面に3人の顔を入れたり、二人の背後の崖や窓に人が現れたり、引きの画が自然と目撃者を導く構図や、顔面のクローズアップが素早く入れ替わるモンタージュなど、人の顔が絶妙にシャッフルされて緊張感が高まっていく演出が、サメの共食いの話と起こす相乗効果が素晴らしかったです。エキストラを画面に引き込むダイナミックさも同様に強い印象を残します。

そして、京劇の舞台と客席で視線のやり取りが始まったことにより、真犯人が浮かび上がる唐突さが見事でした。

さらにそれだけでは終わらず、鏡の間がもはや犯人であるか否かを問わず、お互いの野望がお互いの野望を食いあっていた実態を剥き出しにする、クレイジーハウスの銃撃戦は必見です。「ザルドス」や「燃えよドラゴン」のラストの引用元かと思われますが、この実像と虚像の果し合いの面白さについては、本作がダントツで上手く表現できていると思います。適度なディゾルブが、編集の存在を消すほど上手くいっていました。

銃撃戦が終わったら、あっさりと遊園地の広場にマイケルを放り出す余白の取り方も素晴らしく、一見最後まで完璧のように見えますが、やっぱりメキシコ人や中国人が異国情緒しか出していない弱さは感じました。
あ