べるまちゃん

女の座のべるまちゃんのレビュー・感想・評価

女の座(1962年製作の映画)
4.3
東宝オールスターキャストで年始にぴったり〜!なーんてウキウキして見始めたもののなにやら様子がおかしい。
不吉ななにかの発生に向かって、登場人物たちが怒濤のようなセリフ量でボールをパスしつづけること1時間40分、行き着く先は、えーーーっ。やっぱり成瀬巳喜男怖っ。この「なにか」までのサスペンスフルなタッチ、嫌いじゃないけどやるせない。成瀬だけにやるせない(……)。

東京オリンピックを間近に控えた東京、敗戦から15年が経過するもいまだにその傷は生々しく家族のなかに(というか、デコちゃん様ひとりに…)のしかかっているわけですが、そこに笠智衆、杉村春子、加東大介といった小津映画の常連がいるので、どうしても『東京物語』を想起してしまう。
でもこちらはこちらでさすがの成瀬巳喜男、上述したようにだんだんと息が詰まってくる演出、そしてにぎやかでカラフルな群像劇で見せてくる。司葉子と星由里子の若くてかわいい一服の清涼剤的な存在に救われる。

とまあいろいろ書いたわけですが、高峰秀子の「唯一の他人」感がとにかくすごかった。笠・杉村という小津コンビと成瀬ヒロイン・高峰という対比のなせる技なのか!?
他にも、フツーの中年男性がうますぎる小林桂樹、ベストアクトと呼んでもいいような草笛光子、ヘラヘラっぷりがめずらしい三橋達也と見どころ満載でけっこう気に入ってしまったのでした。