ALABAMA

金色夜叉のALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

金色夜叉(1937年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

松竹大船作品。政府による検閲の印が確認出来た。愛、金、友情、嫉妬、復讐と人間に絡む煩わしい事を題材に書かれ、幾度となく映画化された未完の大作『金色夜叉』を清水監督は静寂とリアリズムをもって湛然に描いている。金よりも愛を信じた間寛一は相思相愛の仲であった宮に裏切られる。宮は愛よりも安定した生活を求めた。寛一は愛を捨て、大学を辞め、友人を捨て、高利貸しとなって金だけを信じて宮への復讐を誓う。富山夫人となった宮はやがて富山の銀行の経営不信によって金と富山の愛を失う。そこに現れた高利貸し間寛一は富山宮に金を叩き付け、復讐を果たすが、もう壊れたものを元に戻す事はできず、みやの前から姿を消す。
いわゆる昼ドラのようなドロドロ展開にも関わらず、主人公ならびに登場人物はいたって冷静であり、観客は画面で起きている自体を、客観的に静観できる。どの登場人物にも非があり、感情面での共感も持てないというのが、この作品の巧みなところ。
場面の切り替わりにカメラの横移動を使っており、時、場所、状況、登場人物、空間構造を瞬時に視覚的に理解出来る演出となっているのが本作の最も特筆すべきところではないかと感じた。現代にも通ずるものを感じた作品。
ALABAMA

ALABAMA