猫脳髄

悪魔の凶暴パニックの猫脳髄のレビュー・感想・評価

悪魔の凶暴パニック(1976年製作の映画)
3.7
あれ?これすごい本格派じゃないか。内容をわかりにくくしてしまった投げやりな邦題と、おそらく有史以来の「ヅラは誰だ!サスペンス」という一見ふざけたテーマに惑わされるが、実は謎のドラッグ「ブルーサンシャイン」(原題でもある)をめぐる骨太なドラマ。しかも登場人物がヅラかどうか、おふざけなしにハラハラさせる稀有な作品に仕上がった。

ショーン・ペン似の主人公が参加したパーティーで、突然頭髪がズルむけ狂暴化した友人に襲われる。格闘中に友人は事故で亡くなるが、主人公は濡れ衣で警察に追われる身になってしまう。恋人の協力で身の潔白を証明しようとするさなか、新たなズルムケ殺人が発生してしまう…という筋書き。

オープニングから、頭髪へのクロースアップと満月へのパンアップで毛絡みであることを暗示する。冒頭で友人が狂暴化するシークエンスには面食らうが、実は全員の髪型がヅラめいており、ヅラorノットのサスペンスがここまで盛り上がるとは思わなかった。しかも、議員候補を絡めた疑惑と、懐に銃をしまって演説会に向かう主人公なんてまるで「タクシードライバー」(1976)である。クライマックスでのショッピングモールを舞台にした追跡劇もうまく演出している。

まさかのテーマをバカバカしさに陥らずに演出しているジェフ・リーバーマン(「スクワーム」(未見・1976))、実はすごい監督なのではないか。あまり作品がないのが惜しまれるが、今後注意してみたい。
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