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孤高のメスのodyssのレビュー・感想・評価

孤高のメス(2010年製作の映画)
3.5
【今どき珍しいストレートな映画】

今どき珍しいくらいストレートな映画です。

地方都市の市立病院にやってきた外科医が、それまでは少し難しい手術だと系列の大学病院に送り込むという情けない状態にあったものを、アメリカ留学の腕前を活かして次々と患者を救っていくというお話。

筋書きはきわめて分かりやすく、善玉悪玉の区別も明瞭なので、構えずに楽しめる作品になっています。今どきだからもう少しひねった方がいいんじゃないかという意見もありそうですが、私は映画やドラマの原点ここにありという印象で、素直に楽しむことができました。

時代設定は昭和が平成に変わった頃ですから今から30年あまり昔ですが、地方都市の病院では医師確保が困難を極めている現状を見れば――この映画が上映された頃も岩手県の地方都市の総合病院が医師を募集したところニセ医師が応募するという事件がありました――テーマは決して古くはなく、むしろ現代的だと言えるでしょう。

看護婦である夏川結衣の視点から、ふらりとやってきた外科医(堤真一)の行動を追うという作りですが、夏川さんは相変わらず色っぽく魅力的ですね。手術のシーンではマスクをしているから眉と目しか見えないけど、にもかかわず美しい。つまり本物の美しさがある女優さんということでしょう。最後で涙をこらえるあまりに怒った表情になりますが、そこがまた色っぽい。

堤真一はそんな夏川さんの魅力に揺れることもなく、またせっかく市長の令嬢である中越典子さんとお見合いしたのに全然身を固める気にならず、朴念仁で困ってしまいますが、まあこういう映画ではヒーローは仕事一筋で女に手を出さないというのが鉄則ですから、仕方がないでしょう。しかし夏川さんも中越さんも私は好きなので、勿体ないなーなんてつい思ってしまいました(笑)。

あと、市長役の柄本明が意外にいい。柄本氏は役柄の幅をものすごく広げていますね。それから、かつてアメリカで堤真一と同じ大学で学び、大学病院の教授になって赴任しながらも堤真一の真価を見抜いている松重豊が、出番は少ないもののいい味を出していました。
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