調伏系V魔虚羅

アレックスの調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
4.5
グチャグチャに潰れた顔、彼等の心の昂りに呼応するように大きく揺れ動き、どちらが上でどちらが下かも分からなくなるカメラワーク。起きてしまった変えられない結末から始まる、時間の逆行した復讐劇。それは避けられぬ暴力、待受ける悲劇。9分間程に及ぶ強姦シーンは思わず目を背けたくなる惨さとリアルさ。観ている我々観客に手を伸ばすかの如く助けを求めるが、私達はただ観ていることしか出来ない。そう、ただの”観客“だからという何も出来ない、してあげられない胸糞の悪さがあのシーンのリアリティさを増している。
時系列を逆に描く事によって、ただの偶然の出来事にさえ必然性等の運命のようなものを感じる。何とも胸糞の悪い一作だ。
ギャスパー・ノエ監督のとことん現実主義的な考えは本作の「時間は巻き戻せない、やり直しはきかない」「変えられない過去への後悔」などのメッセージにも現れている。ラスト、クルクルと回るスプリンクラーの周りを小さい子供達が飛んで遊んでいる様をただ一人でぼうっと眺めているアレックス。スプリンクラーを中心に時計回りか反時計回りか分からなくなるほどに画面が回転する描写がお気に入り。最後の章が、順行か逆行なのか観客に委ねているのか。私はそうやって捉えてしまった。
調伏系V魔虚羅

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