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旅役者のかのレビュー・感想・評価

旅役者(1940年製作の映画)
5.0
最高!こんなに面白い映画がまだあったという感動。

とにかく馬鹿馬鹿しくて誇り高くてパンクで映画的で素晴らしい映画です。ソフト化されていないようなので、特集上映された時は万難を廃して見るべき映画と思います。

あまりに面白くて感動したので、すぐに2回目を観に行きました。

名脇役の藤原釜足が、映画中でも旅する一座の端役を演じており、端役を主役にした映画です。

簡単に言うと馬の脚役の役者が本物の馬に役を奪われて反逆するという内容なんですが、人間愛とユーモアが本当に素晴らしい。

まだ近代化されていない、地方の町の原風景も美しいです。

随所に成瀬のカット割と照明のうまさが、ギャグセンスが見て取れます。

ラストシーン、劇場の外に出たきつね馬のショボさ。芸妓にええカッコしようとしてるのに、クソショボイ。そこから本物の馬のいななきと共に、主旋律が転調してエンディングの騒乱に行く流れ。爆笑と感動で涙が止まらなくなりました。

何気に映画中2度ほどクレーンショットがあり、ぐあーっとカメラが上がって行くのですが、それも良いですよ。

本物の馬とニセモノの馬が田舎の山道に消えていくラストカットは、でたらめさと爽やかな詩情が混じってこれが映画だ!と叫びたくなりました。

自分の仕事を誇り高くやり遂げる人物が私な好きです。
か