Jeffrey

悲しみは空の彼方にのJeffreyのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.0
‪「悲しみは空の彼方に」‬

‪冒頭、1947年コニーアイランド。

ダイヤモンドが降り注ぐ。歌が流れ、海水浴の描写に変わる。1人の女性が迷子の女の子を探す。黒人の家族、低賃金で住み込み、吹雪、偏見、女優業。今、2つの家族の感動の物語が始まる…

本作はD.サークによる米国最後の作品で、人種や肌の色をテーマに家族の在り方を模索して描いた名作で、この度BD化され初見したが素晴らしい。

まず、BDだからなのか映像の色彩がくっきりと色付けられてとても綺麗だ。雪の画にしろ、海にしろ、ファッションにしろ…全てが美しく映り込む徹底的なサークの美的センスには脱帽する。

この映画のテーマの1つに徹底された肌への根深い偏見を浮き彫りにしている。サークって巨大窓ガラスがある家を舞台に捉えるの好きなんだな、あと暖炉。

さて、物語は真夏のニューヨークの海岸で迷子になった1人娘を懸命に探す女優の卵である母親がそこで遊んでいた黒人女性の娘さんと出会す。2人は世間話をし、彼女たちが貧困に苦しんでいる話を聞き自分もお金があるわけではないが養育係として雇う事にする。

そこから幾つもの時代を過ごして行く。軈て、2つの家族に哀しい出来事が…とこんな感じなのだが、あの母親と娘が包容するクローズアップはマジで泣ける。

そしてラストの教会の積み重ねショットは圧巻する。とても慟哭する。ドラマとしてはとんでもなく優れた作品だ。やはりジャクソンのゴスペルが強烈で、一面花に囲まれた棺桶と参列者の哀しみに満ちた表情、死による帰結、それがサークの長編最後とするなら、なんとも…重ねてしまう終わり方だ。

本作はそもそも1934年にオリジナルがあるらしくサーク版はリメイクにあたるそうだ。タイトルは「模倣の人生」でまだ未見である。近々観てみたい。本作でアカデミー賞にノミネートされた黒人女優のファニタ・ムーアの芝居が凄くて圧巻…。だが、主演の白人家族の女優の母親役のラナ・ターナーも優美でエレガントで、尚且つ聡明でとても貧困には見えないが、泣く芝居は凄く印象深い。

米国が激動の時代と言われる60年代に入る前の物語だが、外見からはほぼ白人にしか見えない黒人の娘が黒人であることを恥じて白人と偽る場面や白人家族の母は女優になり、黒人の母はメイドになると言う極端に違う仕事選びも些か我々からしたらえっ、となる。

少しばかり感傷的な気もするが人種問題を学ぶにはうってつけの作品でもある。

ファスビンダーがリスペクトしてるのが分かるくらい絶望の中に光を見出せる魅力的なストーリー性が心に響く…傑作だ。

‬ ‪それにスパルタカスでオスカーを受賞したR. メティのカラー撮影はずば抜けて素晴らしいと思う。
公民権運動の時代を勉強するとより良いかも…あぁ傑作だ。‬
Jeffrey

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